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「クンダリニー・タントラ」を読む【3】序章:新たなレベルでの経験が始まる

「クンダリニー・タントラ」を読む【3】序章:新たなレベルでの経験が始まる

「対象物」が無くとも、心は「経験」する

「KUNDALINI TANTRA(クンダリニー・タントラ)/Swami Satyananda Saraswati(スワミ・サティヤナンダ・サラスワティ)著」を読み進めていく形で、クンダリーニヨガ(クンダリニーヨーガ)の概要を紹介していきます。

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今回は、序章の中盤部分です。

(引用部分の太字強調は私が個人的に重要と思ったところを示したものです。)

クンダリーニヨガの研究については、以下のページにまとめてあります。

参考:クンダリニーヨーガ(クンダリーニヨガ)の研究まとめ

用語:クンダリニー(クンダリーニ)チャクラナディ(ナーディー)

この記事の目次

「心」が経験することは、果てしなく広げられる

Since ancient times, the wise men have realized that mind can be expanded and that experiences do not necessarily depend on an object.

人は通常、「心」を通じて「経験」をするのですが、必ずしも物質世界の「object 対象物」が無くても、「心」は経験を重ねることができるといいます。

物質世界の中で音楽が鳴っていなくても、音楽を頭の中に流すことはできます。物質世界の中で絵を見なくても、絵を頭の中に描くことはできます。

それは単なるイメージというだけではなく、実際に経験しているのと同じことが、脳内で起こっているということです。過去の悪い記憶をいつまでも思い出していると、それは同じ経験を繰り返しているということになります。逆に、良いイメージを鮮明に思い浮かべれば、それもまた良い経験しているということになります。

There can be an experience within the framework of time, space and object, but there can also be an experience beyond the framework of time, space and object. The second form of experience can happen when the present mind expands beyond its given definitions and borders, and when this experience occurs, energy is released from yourself.

このような「対象物」が無くてもできる「経験」は、時間や場所にとらわれることもありません。

人は想像するだけでも、それがしっかりと明確なイメージであれば、物質世界での「経験」をしたのと同じことが心の中・脳の中では起こっています。

これは良くも悪くも、たしかに人の心と体に影響を及ぼします。

悪い記憶を繰り返し思い浮かべて、嫌な気持ちを思い出してしまう、という人もいるかと思います。それは、過去の悪い「経験」をまさに繰り返してしまっているのと同じストレスを受けることになります。

未来のイメージも同様です。もし良いイメージを明確に描くことができれば、それが実際に起こったときと同じような高揚感を、心は「経験」します。旅行に行こうと思ってイメージしていたら、それで十分満足してしまったということもあるかと思います。

このようなことを理解すると、「心」の経験は物質世界にとらわれず、果てしなく広げていけることに気づきます。絵空事だとしても、「心」はしっかりと「経験」をしています。

もちろん間違ったやり方をすれば、心は果てしなく悪い方向に行ってしまうこともできます。注意深く進んでいきましょう。

新たなレベルでの経験が始まる

For hundreds of years, people have been talking about an experience called nirvana, moksha, emancipation, self-realization, salvation or liberation, without understanding it properly.

ヨーガスートラなどで示される「samadhi サマーディ・三昧」や、仏教でも度々登場する「moksha モークシャ・解脱」や「nirvana ニルヴァーナ・涅槃」など、様々なゴールを示す言葉が、古来から人々の中で用いられてきました。

しかし人々は、それらの言葉の意味を正確に理解せずに用いていたといいます。

ヨーガスートラやハタヨーガ・プラディーピカーやシヴァサンヒターなどの古典の中でも、「この言葉とこの言葉は同じ状態を表す」といった説明がよく出てきます。

Nothing finishes, only one level of experience ends, but then another begins.

「サマーディ」など様々な言葉で示されてきたこの目指すべき状態において「すべてが終わる」わけではなく、いままでのレベルでの「経験」が終わり、新たなレベルでの「経験」が始まるのだ、と説かれています。

先ほど示されたように、物質世界にとらわれない経験は、今まで感じていた限界を超えて広がっていく可能性を持っています。

クンダリニーとは、肉体に秘められた力である

Since the dawn of creation, the tantrics and yogis have realized that in this physical body there is a potential force. It is not psychological, philosophical or transcendental; it is a dynamic potential force in the material body, and it is called kundalini.

クンダリニーとは、心理学や哲学の分野の話でもなく、また超越的なものでもなく、物質的な「肉体」に秘められた力であるとサティヤナンダ氏は定義しています。これに関しては、いろいろな考え方や定義があるかもしれません。

第1章の5節で、クンダリニー覚醒のための様々な道が示されます。その中には、マントラを使ったり、瞑想・観想をメインの技法とする道もありますが、結局目的とするのは「肉体に眠っている力を目覚めさせる」ということなのでしょう。

第3章で述べられるクンダリニー覚醒のためのクリヤーヨーガは、主にハタヨーガの教典でも伝えられている「肉体」を使った技法が多く出てきます。

肉体が変化するということは、心も変化します。何をとっかかりとするか、様々な道がありますが、ゴールは同じような気がします。それぞれに合った道を選べば良いのだと思います。

We can see from this research that science is not actually going to discover anything new in this field. It is only rediscovering and substantiating what yogis discovered many, many centuries ago.

第4章で、クンダリニー・ナディ・チャクラに関する科学的な実験について記されています。本山氏の実験も多数引用されていますが、個人的にはしっくりこない部分が多かったので、今回の機会に再度じっくり読んでいった上で考察していこうと思います。

サティヤナンダ氏自身は、これらの実験において何か新しいことが分かったわけではなく、太古の昔からヨーガ実践者たちが気づいていたことを再確認しただけである、と述べています。

次記事:「クンダリニー・タントラ/サティヤナンダ(著)」を読む【4】序章:ゆっくり、気づきを働かせながら、規則正しく進めるべし

前記事:「クンダリニー・タントラ/サティヤナンダ(著)」を読む【2】序章:ヨーガとは、そしてクンダリニーヨーガとは

参考文献

「Kundalini Tantra 英語版 ペーパーバック」 Swami Satyananda Saraswati (著)

「Kundalini Tantra 英語版 Kindle」 Swami Satyananda Saraswati (著)

「密教ヨーガ―タントラヨーガの本質と秘法」本山 博 (著)

男性ヨガインストラクター 高橋陽介の写真

by 高橋陽介

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