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「クンダリニー・タントラ」を読む【6】第1章 2節前半:クンダリニーとは何か

「クンダリニー・タントラ」を読む【6】第1章 2節前半:クンダリニーとは何か

クンダリニーは昔から世界中で認識され、覚醒した人々がいたという

「KUNDALINI TANTRA(クンダリニー・タントラ)/Swami Satyananda Saraswati(スワミ・サティヤナンダ・サラスワティ)著」を読み進めていく形で、クンダリーニヨガ(クンダリニーヨーガ)の概要を紹介していきます。

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今回は、第1章の2節前半です。

(引用部分の太字強調は私が個人的に重要と思ったところを示したものです。)

クンダリーニヨガの研究については、以下のページにまとめてあります。

参考:クンダリニーヨーガ(クンダリーニヨガ)の研究まとめ

用語:クンダリニー(クンダリーニ)チャクラナディ(ナーディー)

この記事の目次

クンダリニーの眠る場所、覚醒の流れ

Kundalini is the name of a sleeping dormant potential force in the human organism and it is situated at the root of the spinal column.

序章で述べられていたように、クンダリニーは脊柱基底に眠るエネルギーです。ここでは「オーガズム(オルガニズム)」のエネルギーであると明確に述べられており、より具体的な位置が説明されています。

第2章以降でより詳しく説明されていきますが、男性と女性では生殖器周辺の構造が異なるため、クンダリニーが眠る位置も少し異なります。ここでは、男性の場合は「会陰」、女性の場合は「子宮口」であるというように説明されています。

ハタヨーガには性に関する技法が数多くあり、日本では特に性に関する話はなかなかオープンにされることが少ないのですが、精力をうまく活用することは、日々の活力や健康につながるだけでなく、人間の進化にもつながっていくと考えられています。

ただ、精力が高まるということは、それを間違った方向に使ってしまう人もいることでしょう。そういったことも含めて、クンダリニー覚醒の行を始める前の心身の準備が重要であると言われます。

This center is known as mooladhara chakra and it is actually a physical structure. It is a small gland which you can even take out and press. However, kundalini is a dormant energy, and even if you press it, it will not explode like a bomb. To awaken kundalini you must prepare yourself through yogic techniques. 

クンダリニーが眠る場所をムーラーダーラチャクラと呼び、主要な7チャクラの中では一番下にある第1のチャクラとして扱われることが多いです。

これは物質として肉体の中に存在し、実際に触ったり押したりすることができると、ここでは定義されています。しかし、それをただ押したところでクンダリニーが覚醒するわけではなく、そのためにはヨーガの技法が必要であるといわれます。

実際、オーガズムを参考にして考えてみると、ただただ肉体的な刺激を加えるだけではうまくいかないことがわかるかと思います。そこには心の状態やイメージや呼吸などが大きく関わっていると想像できるでしょう。そのあたりのヒントが、ハタヨーガの技法には多く秘められています。

You must practise asanas, pranayama, kriya yoga and meditation. Then, when you are able to force your prana into the seat of kundalini, the energy wakes up and makes its way through sushumna nadi, the central nervous canal, to the brain.

アーサナ(ヨガポーズ)や呼吸法・瞑想などを実践して準備した上で、結果的にクンダリニー覚醒のきっかけとなるのは「プラーナ(気)」をクンダリニーの座(ムーラーダーラチャクラ)に流し込むことであると書かれています。

用語:プラーナ(プラナ)
用語:ムーラ

すると、脊柱基底に眠っていたエネルギーが目覚め、ここでは「中央の神経の流れ」と説明されている「スシュムナーナディ」を駆け上がり、脳に到達するといわれています。その上昇の過程で、中央に縦方向に並んで存在する複数のチャクラを通り、それらが脳の眠っていた領域の関係性を作りだし、秘められていた脳の機能を目覚めさせ始めるといわれます。

「プラーナ(気)」は意識(意志)にしたがって動く、という話は私もよくしていますが、チャクラの位置を理解し、そこに意識を集中するというのが、ここでは基本的な行法となっています。それを妨げる様々な障害、体や心の癖などを取り除くために、クリヤーヨーガでは様々なアーサナや浄化法などが用いられます。

参考:意識の向く方向に、エネルギーは流れる

Although kundalini is said to reside in mooladhara chakra, we are all at different stages of evolution

どのチャクラが、強く活動しているか・眠っているかなどは、人それぞれ異なります。それは「進化」の度合いに関係すると定義されています。

現在の状態によって、どの行法を選択するか、どのチャクラからスタートするかなどは、人それぞれ異なっているのが自然なのでしょう。行法のやり方、今の状態にあったものの選び方など、やはり信頼できる師匠からしっかり指示を受けるのが良さそうです。

昔、人はクンダリニーの存在をどのように知ったか

そもそもクンダリニーというものがなぜ「在る」と思われたのか、という話が簡潔に書かれています。

太古の昔、「人々はそれぞれ、なぜこんなに異なった活動をしているのか?」ということを考えるようになったといいます。

人はそれぞれ違う親から生まれて違う環境で育ったのだから、異なった行動をするのは当然のように思えますが、ほぼ同じ臓器を持った人間たちが、なぜそれぞれ違う行動をするようになったのか、よく考えてみれば謎です。

In the course of his investigations, man came to understand that within every individual there is a special form of energy.

調査研究の結果、人々がそれぞれ異なる活動をしているのは、個人の内に秘められたエネルギーに原因があると考えるようになったといいます。そのエネルギーが、どの程度目覚めているのかが人それぞれ異なり、とても少数の人々だけがしっかり目覚めた状態で活動していると説明されています。

そのエネルギーは元々は神・女神・天使などから与えられたものであるとして、それを「プラーナ・シャクティ」、あるいはタントラにおいては「クンダリニー」と呼ぶようになったといいます。

プラーナとクンダリニーは、どちらもエネルギーとして同じような次元で語られることが多いですが、それらは明確に区別されます。

「クンダリニー」の言葉としての意味

「kundalini クンダリニー(クンダリーニ)」はサンスクリット語の言葉で、その語源については諸説あり、誤解も多くあるといわれます。

「kundal」はコイル・螺旋を意味し、クンダリニーは「螺旋を描くもの」であると古来から解釈されてきましたが、これは誤りであるとサティヤナンダ氏は述べています。(ただ、螺旋のイメージもよく用いられているので、「主な語源」は異なるということかと思います)

正しい語源としては「kunda」から来ていて、これは「深いくぼみ」「深いところにある空洞」といった意味の言葉であるといいます。

The fire used in the ceremony of initiation is kindled in a pit called kunda. Similarly, the place where a dead body is burned is kunda. If you dig a ditch or a hole it is called kunda. Kunda refers to the concave cavity in which the brain, resembling a coiled and sleeping serpent, nestles.

kundaは、イニシエーションの儀式で火を焚くために用意されるくぼみ、あるいは遺体を焼くための穴・溝などを指す名前であり、それは脳の中にある空洞を暗示しているといいます。脳は実際解剖して形をみると、とぐろを巻いた蛇のような螺旋の形をしているといいます。

脊柱基底から覚醒して上ってきたクンダリニー(蛇)が、頭の真ん中にある空洞におさまるというのが、クンダリニー覚醒のイメージとしてよく用いられます。

ちなみに私が過去にインドで合宿をスタートするときに、ちゃんと儀式を行いました。僧侶の方が、石の囲いをつくって火を焚き、花や食べ物などいろいろなものを燃やしていました。細かいことはそのとき聞かなかったのですが、これがkundaの一種だったのかもしれません。

「クンダリニー」という言葉は、それが眠っているときの状態のときの名称であり、それが目覚めて顕現したときは、デーヴィ、カーリー、ドゥルガ、サラスワティ、ラクシュミーなど、顕現して見える神の名前として呼ばれるといいます。

In the Christian tradition, the terms “the Path of the Initiates” and “the Stairway to Heaven” used in the Bible, refer to kundalini’s ascent through sushumna nadi. The ascent of kundalini and ultimately, the descent of spiritual grace, are symbolized by the cross. This is why Christians make the sign of the cross at ajna, anahata and vishuddhi chakras, for ajna is the center where the ascending consciousness is transcended and anahata is where the descending grace is made manifest to the world.

またキリスト教においては「修行者の道」「天国への階梯」などの言葉が聖書で使われますが、それはクンダリニーがスシュムナーナディを上昇していくことを表しているといいます。クンダリニーが上昇し、神の恵みが降りてくる、ということを、十字架が表しているとし、クリスチャンが十字を描く動作は、眉間のチャクラから心臓のチャクラへ恵みが降りてきて世界に顕現するということを表しているとしています。

このように、様々な宗教における哲学や儀礼などは本来同じものを表している、という話はヨーガにおいてはよく出てきます。神様も日本と同じようにたくさんいて、人それぞれにあった神様が顕現して恵みを与えてくれるということでしょう。

Whatever happens in spiritual life, it is related to the awakening ot kundalini. And the goal of every form of spiritual life, whether you call it samadhi, nirvana, moksha, communion, union, kaivalya, liberation or whatever, is in fact awakening of kundalini.

改めて、ヨーガのゴールであるサマーディや、仏教のゴールであるニルヴァーナやモークシャなど、それらは全てクンダリニーの覚醒と同義であると述べられています。

ここで「spiritual life」という言葉が使われていますが、「スピリチュアル」や「精神世界」といった言葉の捉え方は様々かと思います。「見えないもの」を扱う上で、「スピリチュアル」という言葉がよく使われるため、日本では少しあやしいものと捉える人も多いかもしれません。

本を読んでいく以上、その媒体は「言葉」であるわけですが、「言葉」で全てを表すことは難しいです。言葉を知っただけで分かった気になってしまったりすることなく、しっかりと気づきを磨いて、言葉の意味するところを読み取っていく必要があります。

次記事:「クンダリニー・タントラ/サティヤナンダ(著)」を読む【7】第1章 2節後半:クンダリニーを表す蛇のイメージ、覚醒の条件

前記事:「クンダリニー・タントラ/サティヤナンダ(著)」を読む【5】第1章 1節:クンダリニーを飼いならすべし

参考文献

「Kundalini Tantra 英語版 ペーパーバック」 Swami Satyananda Saraswati (著)

「Kundalini Tantra 英語版 Kindle」 Swami Satyananda Saraswati (著)

「密教ヨーガ―タントラヨーガの本質と秘法」本山 博 (著)

男性ヨガインストラクター 高橋陽介の写真

by 高橋陽介

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