「KUNDALINI TANTRA(クンダリニー・タントラ)/Swami Satyananda Saraswati(スワミ・サティヤナンダ・サラスワティ)著」を読み進めていく形で、クンダリーニヨガ(クンダリニーヨーガ)の概要を紹介していきます。
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今回は、第1章の7節、クンダリニーヨーガ実践における食生活に関する部分です。
(引用部分の太字強調は私が個人的に重要と思ったところを示したものです。)
クンダリーニヨガの研究については、以下のページにまとめてあります。
用語:クンダリニー(クンダリーニ)・チャクラ・ナディ(ナーディー)
クンダリニー覚醒による食生活と体の変化
When the awakening of kundalini takes place it is important to have the correct diet, as food influences the mind and your nature. At the time of awakening, certain physiological changes occur in the body, particularly in the digestive system, and the digestive process is frequently disturbed, or hunger vanishes completely. Therefore, a kundalini aspirant has to be very careful about his diet.
食べるものは、人の心や本性に影響を与えるため、正しい食をとることが重要であると説明されています。
修行が進むにつれて消化器官は働きを抑えるようになり、食欲は完全に消え去るといわれます。消化器官に使われていたエネルギーが別のことに使われるようになり、そのような状態に至ったときに暴食などしてしまわないように、食生活には特に気を配る必要があります。
Scientific observations have shown that the awakening of kundalini is generally accompanied by a state of nervous depression. The inner body temperature undergoes erratic changes and drops so much that it becomes much lower than the outer body temperature. Metabolism slows down and sometimes it even stops completely. Consumption of oxygen also falls. Therefore, when you are experiencing kundalini awakening your diet must be very light and easy to assimilate.
クンダリニーの覚醒は、通常働いていた神経の働きが抑えられることによって進み、それによって体内温度は下がり、代謝は止まり、酸素消費も減るため、食べ物は消化の良いものをとても少量とるだけで済むようになるといいます。
これらの変化は、一般的には健康に良くないことのようにも思えますが、シヴァナンダ氏もサティヤナンダ氏も写真や映像を見る限り全く不健康には見えないですし、ちょっと恰幅が良いぐらいの体型で活気に溢れています(実際彼らが何を食べていたのか調べることはできませんが…こっそりお菓子をいっぱい食べていたかもしれませんし…)。
通常は肉体の維持に使われていたエネルギーが別のことに使われるようになり、今まで使っていなかった脳の部分が使われるようになるということかと思います。断食の末に超能力に目覚めたという人がいる理由のひとつは、そういうことかもしれません。
実際私もかなり食べる量は減りましたが、ガリガリに細いわけでもないですし、元気に毎日ヨガのレッスンもしています。
クンダリニーヨーガ実践者に適した食事
食生活に関しては、何が正しいのか、本当に諸説があります。
ここでは、サティヤナンダ氏がいろいろ試した末に至ったいくつかのアドバイスが書かれています。
ざっとまとめると、以下のようなポイントがあります。
- 消化に良いものを、最小限摂るようにし、消化器官に負担をかけないようにする。
- 人間の消化器官を観察したところ肉食動物とは明らかに異なり、よく調理された菜食料理(特に、茹でたもの・粥にしたもの)が最適な食べ物である。ただし、肉食する人がクンダリニー覚醒できないというわけではない。
- マクロビオティック(シンプルで薄味な自然食)が基本である。
もし今の自分の食生活に違和感があるなら、思い込みを捨てて自分でいろいろ試してみるのが良いでしょう。
沖正弘氏の著書にもたくさんの食生活に関するアドバイスがあります。ちなみに彼は「蒸す」のが最上の調理法だと言っています。
The best diet for a kundalini yogi is boiled food. Crushed wheat, barley, lentils and dal are excellent foods, particularly when they are in a liquid form. Fats and greasy foods should be avoided and protein should be kept to a minimum. This will take any strain off the liver, because when the mind undergoes a crisis, the liver is overtaxed.
It is good to increase the carbohydrates in your diet, eg. rice, wheat, maize, barley, potato, etc., because carbohydrates help to maintain the inner body temperature and they do not require much heat to digest. Eggs, chicken and other heavy foods do not produce much heat themselves, but they require heat for digestion.
The yogic diet is macrobiotic, it is simple, plain and relatively bland. From time to time, fruits and roots can also be taken, but they are not essential.
脂肪や油を含む食べ物は控え、タンパク質は最小限にし、炭水化物は多くするべし、と説明されています。理由として、炭水化物は容易に消化され、体内温度を保つのに有効であるといったことが示されています。流行に乗って炭水化物を減らしている人は、慎重に体の変化を観察しながら検討してみるのが良いかもしれません。
ヨガ実践者の食事はマクロビオティックであると書かれていますが、現代の日本の「マクロビ」にもいろいろな捉え方があるかと思います。ここでは、シンプルであっさりした比較的薄味な食事、というような説明がされています。
A great misunderstanding has taken place in the last twenty to thirty years, and that is that a yogi should only take milk, fruit and raw vegetables. On the basis of personal observations, trials and errors, I can never accept that this is correct. There are certain foods which are not meant for the human body at all. If you analyze your digestive and salivary secretions and the durability of the mucus membranes in the alimentary canal, you will find that they are not really meant for digesting meat and uncooked foods. Whereas carnivorous animals have short intestines so their food can be expelled quickly, before fermentation takes place, we have very long intestines (36 feet in length) and our food should take eighteen hours to pass through the body. Because well cooked vegetarian food is less likely to ferment, and we can keep it in our intestines for a full eighteen hours, it is the best for the human digestive tract.
ヨーガ実践者はミルクとフルーツと生野菜しか食べないといったイメージがあったようですが、これは全くの誤解であると説明されています。
生野菜がいいのか調理された野菜がいいのかということも重要なテーマかと思いますが、人間の消化器官を観察した結果、肉食動物よりも腸がとても長く菜食動物に近いため、18時間という長い時間をかけて消化吸収されるのが最適なようにできているとして、つまり肉や生の食材を消化するには適しておらず、よく調理されたベジタリアン食が適していると結論づけています。
Of course, this is not to say that people who take a non-vegetarian diet cannot awaken their kundalini, as history indicates otherwise. There have been many Christian, Tibetan and Sufi saints who awakened their kundalini although they took a meat diet. And we can’t say what Christ, Moses, Mohammed and Buddha ate because we haven’t seen. However, from scientific observations made in the event of kundalini awakening, we know what is likely to occur in our body. At certain periods we may not be able to digest raw foods and there may be days when the body cannot even accept water. Therefore, during the period of kundalini awakening, please take a diet which can be easily assimilated and eat the bare minimum for existence. Do not live to eat, but eat to live.
歴史を振り返ると、ベジタリアンでなければクンダリニーが覚醒しないということはないようです。ただ、キリストやモーゼやモハメッドやブッダが実際に何を食べていたのかはわかりません(先ほど書いたように、サティヤナンダ氏自身も何を食べていたのか、正確にはわかりませんね)。
しかしクンダリニー覚醒に伴う消化器官の働きの変化などは科学的にも解明してきていて、それらの結果によれば、やはり消化に良いものを最小限摂るべし、という原則はどうやら正しいようです。
スパイスなど調味料・香辛料の重要性
In the diet for kundalini aspirants, condiments have a very important role to play. Condiments such as coriander, cumin seeds, tumeric, aniseed, black pepper, green pepper, cayenne, cloves, mustard seed, cardamom, cinnamon and so on are also called digestives as they aid digestion. These substances are not spices for taste; they are condiments which have the same properties as the enzymes in the body, and by helping to break down the food for digestion, they conserve vital energy and help to maintain the body’s internal temperature.
アシュラムの食事にはいろいろな「カレー」がありますが、そこで使われているコリアンダーやクミンやターメリックなど多くのスパイスは、単に味を整えるためだけのものではなく、それらは「消化酵素」と同じように働くと説明されています。
5〜6種類のスパイスを加えて調理された食べ物は、酵素の働きを高め、消化を助けます。それらは別々に摂って胃の中で合わさるのではなく、調理された状態で食べるのが良いといいます。
そういった理由も含めて、先ほど説明されていたように「よく調理された」料理が最適な食べ物であると述べられています。
ヨガと食生活の関係
Although diet is an independent science, it is definitely related to every system of yoga. Of course the ideal diet varies from yoga to yoga. A hatha yogi practising shankhaprakshalana will not be able to eat lots of red peppers and black peppers or he’ll die. The diet regime for a karma yogi, a bhakta yogi, raja yogi, hatha yogi and kriya yogi will not be the same.
A bhakta yogi can eat all types of sweets and confectionary, consume cheese, butter, milk, etc. and he can eat and eat because his metabolism is very fast. Similarly, a karma yogi can take cheese, coffee, raw foods or cooked food, and even a little bit of champagne, because he is working hard physically and his metabolism is also very fast. But in raja yoga and kundalini awakening, the metabolism becomes slow and you have to be very careful about your diet and how much you consume.
実践するヨーガの種類によって、最適とされる食生活は異なっています。
たとえばバクティヨーガを実践する人は、とても代謝が速いため、甘いものやお菓子も食べ、チーズ・バター・ミルクなども食べます。カルマヨーガを実践する人も、とても活発に活動するので代謝が速く、チーズもコーヒーも生の食べ物も食べ、シャンパンも少し飲んだりします。
しかしラージャヨーガを実践する人や、クンダリニーが覚醒した人は、代謝がゆっくりになるため、何をどのくらい食べるかを慎重に判断する必要があるといいます。
I have evolved two wonderful foods which suit everybody. One is for those who like rice and the other is for those who prefer wheat. You either cook the rice with dal (pulses such as lentils), vegetables and a few condiments, or you pound the wheat, add all the same ingredients to that and cook it well. I call this integrated kichari. You can add anything to it and it’s alright.
アシュラムでは様々なヨーガを実践する人々がいるため、アシュラムを運営するサティヤナンダ氏は、どんな食事を提供するべきかを検討し続けていたようです。
その中で、米を主食とする人と、小麦を主食とする人の両方に対応できる、最適な主食となる「kichari キチャリ」を用いるようになったといいます。キチャリは、米とダル(レンズ豆など)と野菜をいくつかのスパイスで調理したもの、あるいは同じ材料を小麦と一緒にたたいてのばしたものであると説明されています。そこにいろいろな食材を追加していくこともできます。
私も「shankhaprakshalana シャンカプラクシャーナ」の浄化法を行ったあと、しばらくはキチャリしか提供されませんでした。断食明けの食事は消化の良いお粥から始めるのと同じように、最初のキチャリはおそらく米ベースのほうのものでかなり液状になっていて少量で、塩も使われていない味気のないものでした。徐々に量が増えていき、豆の輪郭のあるものに変わっていき、数日後に普通の食事にもどった!かと思いきや、同じ見た目ですがなんと塩が入っていないというものでした。そういったダイナミックな食の経験をしたこともあり、その後もいろいろなことを試すようにしてきました。
食に関しては、人それぞれいろいろなこだわりがあることでしょう。いまの食生活に違和感がもしあるのなら、執着せずにいろいろ変えてみると良いと思います。一緒に暮らしている人がいると、理解がなければなかなか難しいかもしれませんが、できる範囲でいろいろやってみてください。
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参考文献
「Kundalini Tantra 英語版 ペーパーバック」 Swami Satyananda Saraswati (著)
「Kundalini Tantra 英語版 Kindle」 Swami Satyananda Saraswati (著)
「クンダリニー」ゴーピ・クリシュナ (著), 中島巌 (翻訳)
「Asana Pranayama Mudra Bandha 英語版」Swami Satyananda Saraswati (著)