「クンダリニー・タントラ/スワミ・サティヤナンダ・サラスワティ著」を読み進めていく形で、クンダリーニヨガ(クンダリニーヨーガ)の概要を紹介していく連載記事です。
「Kundalini Tantra 英語版 ペーパーバック」 Swami Satyananda Saraswati (著)
「Kundalini Tantra 英語版 Kindle」 Swami Satyananda Saraswati (著)
今回は、第3章の14節、クンダリニー・クリヤーヨーガの実践、ダーラナー(クリヤー No.10〜19)とディヤーナ(No.20)に関する部分です。
この記事の目次
10. ナウムクヒ・ムドラー
ここから19まではダーラナー(集中)の実践になります。
シッダーサナ(男性)、シッダヨーニアーサナ(女性)またはパドマーサナで坐り、目を閉じておきます。ムーラーダーラチャクラの場所が押されるように、必要であればクッションなどで会陰に圧をかけます。
ケーチャリームドラーを行い、頭を少し前へ傾けます(ジャーランダラバンダは行いません)。頭の中で「ムーラーダーラ、ムーラーダーラ、ムーラーダーラ」と唱えます。
ウジャイ呼吸で吸い、アローハンを通って意識を上げていきビンドゥに至ります。ヴィシュッディからビンドゥに至る最後の過程で、頭を上げます。
ヨーニムドラーを行い、親指で耳をふさぎ、人差し指で目をふさぎ、中指で鼻をふさぎ、上唇を薬指、下唇を小指で軽くおさえます。同時にムーラバンダとヴァジローリームドラーを行います。これによって、体の「九門」(両目・両耳・両鼻・口・肛門・性器)が塞がれたことになります。
背骨を通る道筋とビンドゥに気づきを向けます。ここで、輝く銅の三叉槍(トリシュル)をイメージします。その槍はムーラーダーラチャクラに下端があり、柄は背骨を通って上へ伸び、ヴィシュッディチャクラから先へ刃が伸びていて、その刃先はとても鋭くなっています。
そのトリシュルは、独自のリズムで数回わずかな上昇を繰り返し、中央の刃はビンドゥを貫きます(ビンドゥを繰り返し突き刺すような動き)。そのリズムでビンドゥを貫くたびに「ビンドゥ・ベーダン」(ビンドゥを貫く)のマントラを頭の中で唱えます。
しばらく続けた後、ヴァジローリームドラーとムーラバンダを解き、ヨーニムドラーを解いて手を膝の上に置いた後、ウジャイ呼吸で息を吐きながらアワローハンを下ってビンドゥからムーラーダーラチャクラへ至ります。
頭の中で「ムーラーダーラ」を3回唱えます。
再びウジャイ呼吸で息を吸い、以上の流れを5回繰り返し、最後に息を吐ききったところで終わります。
このクリヤーの間は、背中を常にまっすぐに保つことが重要です。まっすぐでなければ、ビンドゥを貫く感覚は得られないといいます。
アローハンとアワローハンを通るとき、各チャクラの名前を頭の中で唱えても構いません。
ヴァジローリームドラーは完璧に行えるようにしておくと、この実践で得られる感覚はより磨かれていくといいます。肛門を収縮することなく、尿を止めるような筋肉だけを動かせるようにしておきます。これによってヴァジュラ・ナディに電流が流れ、脳に至り、ビンドゥには電気的な感覚が得られるといいます。(ヴァジュラ・ナディは、スシュムナーを構成する3層の次元の中のひとつで、vajriniヴァジリニという名前で出てきました。)
参考:「クンダリニー・タントラ」を読む【11】第1章 3節-4:スシュムナー・ナディの重要性
11. シャクティ・チャーラニー
シッダーサナ(男性)、シッダヨーニアーサナ(女性)またはパドマーサナで坐り、目を閉じておきます。
ケーチャリームドラーを行い、息を吐ききって意識をムーラーダーラチャクラに置きます。頭を少し前へ傾け、頭の中で「ムーラーダーラ、ムーラーダーラ、ムーラーダーラ」と唱えます。
ウジャイ呼吸で吸い、アローハンを通ってビンドゥへ上がっていき、ヴィシュッディチャクラからビンドゥへ至る過程で頭を上げます。
息を止めて、ヨーニムドラーを行います(ムーラバンダとヴァシローリームドラーをあわせて行っても良い)。
息を止めている間、意識はビンドゥからアワローハンを下がってムーラーダーラチャクラへ至り、そこからアローハンを上がってビンドゥに至り、そのループを続けるようにします。
その道筋に、緑の大蛇を視覚化します。蛇の尻尾はビンドゥにあり、胴体はアワローハンを通ってムーラーダーラチャクラへ、そしてアローハンを通ってビンドゥへ至り、頭もビンドゥにありますがその口は自分の尻尾をくわえています。
この蛇をただ眺めていると、自然にその道筋を通って廻り始めるか、そこから外れて独自の道筋へ移動し始めることもあるといいます。どんな動きをしようとも、ただ眺めるようにします。
息が続かなくなったら、ヨーニムドラーを解き、手を膝の上に置いて、意識をビンドゥに戻します。
ウジャイ呼吸で息を吐きながら、アワローハンを下ってムーラーダーラチャクラに至ります。頭を少し下げて、「ムーラーダーラ」を3回唱えます。
以上の流れを、休みをはさむことなく5回繰り返します。
12. シャーンバヴィー
シッダーサナ(男性)、シッダヨーニアーサナ(女性)またはパドマーサナで坐り、目を閉じてケーチャリームドラーを行います。
頭頂に、蓮の花をイメージします。
その太くて長い茎は下へ向かって伸びています。その根の色は、白または透明な緑で、ムーラーダーラチャクラから広がっています。
太い緑の茎は、背骨の道筋を表しています。蓮華はサハスラーラを表し、それはつぼみの状態で閉じています。
つぼみの下端には、ライトグリーンの未熟な花弁が数枚あります。主要な花弁は、微細な赤い縞模様のあるピンク色をしています。
その蓮華を心に視覚化しますが、それは実際に体の一部であるようにイメージします。
息を吐き、ムーラーダーラチャクラにある蓮華の根に意識を向けます。
ウジャイ呼吸で吸いながら、蓮華の茎の中央、背骨の道筋を意識が上がっていくのを感じます。イモムシのように這い上がっていくように感じます。
吸う息の最後で、頭頂のつぼみに意識が達します。息を止めて、サハスラーラに意識を置きます。
自分が蓮華の中にいて、外側からもその様子が見えているような状態です。
つぼみはゆっくりと開いていきます。開くにつれて、美しい蓮華が姿を現していきます。中央には黄色い花粉を付けた雄しべがあります。
蓮華は再びゆっくり閉じていき、またすぐに開いていきます。その開閉が止まって閉じられた状態に戻ったら、ウジャイ呼吸で吐く息とともに意識は茎を下ってムーラーダーラチャクラへ至ります。
ムーラーダーラチャクラで数秒間留まった後、蓮華の根が全ての方向へ広がっていくのを視覚化します。
再びウジャイ呼吸で吸いながら、茎の中を通って意識を上げていき、繰り返します。
フルで11回、減らして行う場合は5回行います。
13. アムリト・パン
シッダーサナ(男性)、シッダヨーニアーサナ(女性)またはパドマーサナで坐り、目を閉じてケーチャリームドラーを行います。
意識をマニプーラチャクラに置きます。そこに、温かくて甘い液体(ネクター)が蓄えられているイメージをします。
ウジャイ呼吸で吐ききった後、ウジャイ呼吸で吸いながら、呼吸の力でその液体を上へ吸い上げ、背骨を通ってヴィシュッディチャクラに至るようにします。
ヴィシュッディチャクラで数秒間留まり、吸い上げた温かいネクターはそこで冷まされます。
そして、ウジャイ呼吸で吐きながら、ララナチャクラ(軟口蓋の後ろ)へネクターを引き上げます。
冷たいネクターを、呼吸の力でララナに吹き付けるようにイメージします。
ララナチャクラに至ったとき、息は自然に散って消えます。
その後すぐに意識をマニプーラチャクラに戻します。ウジャイ呼吸で吸いながら、再びネクターを吸い上げるイメージを始めます。
これを9回繰り返します。
14. チャクラ・ベーダン
シッダーサナ(男性)、シッダヨーニアーサナ(女性)またはパドマーサナで坐り、目を閉じてケーチャリームドラーを行います。
ウジャイ呼吸を続け、吸う息と吐く息の間には間をあけないようにします。
息を吐き、背骨の一番下のスワディシュターナチャクラへ意識を下ろします。
吸いながら、意識をムーラーダーラチャクラに移し、そこからアローハンを通して上げていきます。
喉(ヴィシュッディチャクラのクシェートラム)まで意識を上げたところで息を吐ききり、吐き始めると同時に意識をビンドゥに移して、そこからアージュニャーチャクラを通ってアワローハンを下っていきスワディシュターナに至ります。
これをフルで59回、減らして行う場合は11回行いますが、続けていくうちに気持ちが内向的になり始めたときはそこで止めて、次のクリヤーに移るようにします。
アローハン・アワローハンを通る際に、各チャクラ名を頭の中で唱えることもできます。
同じような行法は他にもありましたが、ここでは吸い始め・吐き始めの意識の移動に「direct」という表現があることから、経路を通って意識を動かしていくというよりも「パッと意識を移す」というニュアンスが感じられます。こういった微細なコントロールには集中力が必要であり、そのためにダーラナー(集中)の実践の中に組み込まれているのでしょう。
行法名の「bhedan ベーダン」という語は先ほども出てきましたが、分別する・分ける・識別するといった意味もある言葉です。
15. スシュムナー・ダルシャン
チャクラの視覚化のために、チャクラの図を参考にしておきます。以下、Wikipediaから画像を引用しますが、ここで描く図形とは異なります。色付けはせず、単純な線を使って、イメージで描く実践です。
シッダーサナ(男性)、シッダヨーニアーサナ(女性)またはパドマーサナで坐り、目を閉じて、自然な呼吸で行います。このクリヤーでは呼吸と意識は関係ありません。
(Wikipediaから画像を引用しますが、ここで描く図形とは少し異なるようです。)
意識をムーラーダーラチャクラに置きます。頭の中で鉛筆をイメージし、ムーラーダーラチャクラの位置に正方形を描きます。
その正方形の中に、できるだけ大きく、逆さの正三角形を描きます。
正方形の4辺に内接する円を描きます。4枚の花弁を、各辺の外に接するように描きます。
(Wikipediaから画像を引用しますが、ここで描く図形とは少し異なるようです。)
次にスワディシュターナチャクラに意識を移します。
ムーラーダーラチャクラの際に書いたのと同じ半径の円を描き、円の周りに6枚の花弁を描きます。
円の中の下の底に、三日月を描きます。
(Wikipediaから画像を引用しますが、ここで描く図形とは少し異なるようです。)
次にマニプーラチャクラに意識を移します。
円を描き、その中にできるだけ大きな逆三角形を描きます。
中央に炎の球を描きます。円の周りには10枚の花弁を描きます。
(Wikipediaから画像を引用しますが、ここで描く図形とは少し異なるようです。)
アナーハタチャクラに意識を移します。上向き下向きで重なりあった2つの正三角形を描きます。三角形の頂点に接する円を描き、周りに12枚の花弁を描きます。
(Wikipediaから画像を引用しますが、ここで描く図形とは少し異なるようです。)
ヴィシュッディチャクラに意識を移します。円を描き、その中にネクターの滴を意味する小さい円を描きます。大きい円の周りに16枚の花弁を描きます。
(Wikipediaから画像を引用しますが、ここで描く図形とは少し異なるようです。)
アージュニャーチャクラに意識を移します。円を描き、中央に大きくOmの字を描きます。円の左右に大きな2枚の花弁を描きます。
(Wikipediaから画像を引用しますが、ここで描く図形とは少し異なるようです。)
ビンドゥに意識を移します。三日月を描き、その上にとても小さい円を描きます。
(Wikipediaから画像を引用しますが、ここで描く図形とは少し異なるようです。)
サハスラーラに至ります。円を描き、内接する上向きの三角形を描きます。円の周りに、1000枚の花弁を描きます。
これらのチャクラのイメージを、同時に全て観るようにイメージします。最初はとても難しいため、最初の日はまず2つだけ同時に観るようにし、1日に1つずつ増やしていくようにしていきます。
16. プラーナ・アフティ
シッダーサナ(男性)、シッダヨーニアーサナ(女性)またはパドマーサナで坐り、目を閉じて自然な呼吸をします。
頭の上に、神聖な手がやさしく触っているのをイメージします。その手は、微細なプラーナを体と心に注入し、そのプラーナはサハスラーラから背骨を通って下りていきます。
その感覚は、冷たかったり、熱かったり、エネルギーや電気の流れのようであり、風や液体の流れのように感じられることもあります。そして、振動、衝撃、急動、ちくちくするような感覚が体全体に伝わります。
プラーナがムーラーダーラチャクラに至ったら、2回目は行わず、すぐに次のクリヤーに向かいます。
行う長さとしては、前記事で「1分」と指示されています。
17. ウッタン
シッダーサナ(男性)、シッダヨーニアーサナ(女性)またはパドマーサナで坐り、目を閉じて自然な呼吸をします。
ムーラーダーラチャクラに意識を置きます。
以下のイメージを正確に視覚化し、その細部にまで気づきを向けるように心がけます。
煙のようなガス状の物質によってつくられた黒いシヴァリンガムをイメージします。
その根元と頂点は切り取られており、その周囲には赤い小さな蛇が巻きついています。この赤い蛇は、巻きつきをほどいて、スシュムナーを通って上へあがっていこうとしています。そのために奮闘し、怒ったような「シャー」という音をたてています。
蛇の尻尾は依然としてシヴァリンガムの根元に固定されていますが、頭と体は、上へあがろうとしたり、再び下へさがってしまったりを繰り返しています。
時折、シヴァリガムと蛇は体内で位置を変えることがあるので、アージュニャーチャクラやサハスラーラに意識を置いているときにそれらを視覚化することができます。
蛇の頭はとても幅広く、人の体と同じ幅があります。ただし、その蛇ではコブラではないといいます。
しばらくして、体が収縮するのを感じます(「contract」という語が使われていますが、体全体が「収縮」するという意味なのか、筋肉が縮むことを意味しているのか、あるいは何かの「契約」のようなものを意味しているのか。おそらくは全身が小さくなるようなイメージのように思えます。このイメージは、以降の行法にもつながります。)。その後、至福の感覚が現れるといわれます。
この感覚が現れたとき、次のクリヤーに進みます。
長さとしては、前記事では「2〜3分」と指示されています。
18. スワルーパ・ダルシャン
シッダーサナ(男性)、シッダヨーニアーサナ(女性)またはパドマーサナで坐り、目を閉じておきます。
肉体に意識を向けます。完全に不動の状態を保ち、全ての気づきをその事実(不動であること)に向けます。岩のように完全に安定した状態を保ちます。
その安定性に確信が持てたら、自然な呼吸にも意識を向けます。
安定した呼吸の流れを観察しながら、肉体は安定した状態を保ちます。
体は、かたくなり始めます。かたくなるにつれて、意識は完全に呼吸の方に向かいます。しかし身体は自然にかたくなり続けます。体が石のように固定されたら、たとえ疲れたとしても、もはや自分の意志で動かすこともできないような状態になります。
そのような状態になったら、次のクリヤーに進みます。
長さとしては、前記事では「2〜3分」と指示されています。
19. リンガ・サンチャラナ
かたく不動になった坐法を保ち、目を閉じたままにします。体がかたくなるにつれて、呼吸は自動的にウジャイ呼吸になっていき、ケーチャリームドラーが自然に行われます。
呼吸に全ての気づきを向けます。吸う息で、体が膨らんでいき、吐く息で、体が縮んでいくのを感じます。肉体は石像のように不動であるため、この感覚は、アストラル体が膨らんだり縮んだりしているのを感じていることになります。
その収縮と拡大を観察していると、さらに顕著な大きさの変化になっていきます。しばらくすると、肉体の意識はなくなり、アストラル体だけに直接意識を置くようになっていきます。
アストラル体の収縮はさらに顕著になっていき、ついには光の点にまで小さくなります。
その状態に至ったら、すぐに次のクリヤーに移ります。
長さとしては、前記事では「2〜3分」と指示されています。
20. ディヤーナ
10〜19はダーラナー(集中)の実践で、20はディヤーナ(瞑想)の実践です。
アストラル体が光の点のように小さくなったのを感じたら、その光の点に近づいて観ると、それが黄金の卵の形をしているように観えます。
黄金の卵を観察していると、それが膨らみ始めます。
黄金の卵は明るく輝きを放っていますが、光線を外に発しているわけではありません。
卵が大きくなるにつれて、アストラル体や肉体と同じ形を成すようになっていきます。しかし、その形態は粗雑でも微細でもないものであり、それは輝く光、コーザル体(原因身)としての自分自身であるといいます。
このクリヤーを行う長さなどは、特に指示されていません。
ヨーガでは人間の体(存在)を、粗大身(肉体)・微細身(アストラル体など)・原因身(コーザル体)という3つのシャリーラに分類して考え、ここでようやく原因身に至るということになります。
このあたりは、神智学による分類などとも比較してみると良いかと思います。
以上で、全ての行法の解説が終わりました。
次の第4章は、サティヤナンダ氏の弟子のシャンカルデーヴァナンダ氏がまとめたクンダリニーに関する研究ですが、ここはいずれまた必要があれば記事にしていこうと思いますので、一旦この連載はここで完結とします。
これから読み始めようという方のために、以下に目的別の読み進め方のまとめ記事を書きました。
まとめ記事:「クンダリニー・タントラ」をこれから読む方へ、目的別・読み進め方
前記事:「クンダリニー・タントラ」を読む【51】第3章 14節 前半:クリヤーヨーガの実践(プラティヤーハーラ)
また、サティヤナンダ氏の師匠であるシヴァナンダ氏の著書「クンダリニーヨーガ」についても、以下の記事で簡単に紹介しています。
参考:「クンダリニーヨーガ/シヴァナンダ(著)」の目次構成と特徴
参考文献
「Kundalini Tantra 英語版 ペーパーバック」 Swami Satyananda Saraswati (著)
「Kundalini Tantra 英語版 Kindle」 Swami Satyananda Saraswati (著)
「クンダリニー」ゴーピ・クリシュナ (著), 中島巌 (翻訳)
「Asana Pranayama Mudra Bandha 英語版」Swami Satyananda Saraswati (著)