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「クンダリニー・タントラ」を読む【11】第1章 3節-4:スシュムナー・ナディ

「クンダリニー・タントラ」を読む【11】第1章 3節-4:スシュムナー・ナディ

真実は逆かもしれない、言葉で理解しようとしないこと

「KUNDALINI TANTRA(クンダリニー・タントラ)/Swami Satyananda Saraswati(スワミ・サティヤナンダ・サラスワティ)著」を読み進めていく形で、クンダリーニヨガ(クンダリニーヨーガ)の概要を紹介していきます。

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今回は、第1章の3節の最後、スシュムナー・ナディと「逆向きの樹」に関する部分です。

(引用部分の太字強調は私が個人的に重要と思ったところを示したものです。)

クンダリーニヨガの研究については、以下のページにまとめてあります。

参考:クンダリニーヨーガ(クンダリーニヨガ)の研究まとめ

用語:クンダリニー(クンダリーニ)チャクラナディ(ナーディー)

この記事の目次

スシュムナーの重要性

Sushumna nadi is regarded as a hollow tube in which there are three more concentric tubes, each being progressively more subtle than the previous one. The tubes or nadis are as follows: sushumna – signifying tamas, vajrini – signifying rajas, chitrini – signifying sattva and brahma – signifying consciousness. The higher consciousness created by kundalini passes through brahma nadi.

スシュムナー・ナディは、同じ道を通る複数の経路が重なり合っていると説明されています。以下の順番に、微細な次元のナディになっていきます。

  • スシュムナー:タマス
  • ヴァジリニ:ラジャス
  • チトリニ:サットヴァ
  • ブラフマ:意識

高次元の意識は、クンダリニーがブラフマ・ナディを通るときにつくられると説明されます。

神智学やバーバラ・アン・ブレナン氏の理論などでも、人の体は粗大なものから微細なものまで数層にわたって重なり合って存在し、チャクラも各次元に存在するという定義がされます。

「光の手 (上)」バーバラ・アン・ブレナン (著), 菅靖彦 (翻訳)

「神智学大要 第1巻  エーテル体」A.E. パウエル (編集), 仲里 誠桔 (翻訳)

ここではその各次元の体の中央を通るナディの名前が挙げられ、「スシュムナー」はその中でも最も粗大なもので、物質・肉体に一番近いものであるということでしょう。

用語:グナ guṇa

When kundalini shakti awakens it passes through sushumna nadi. The moment awakening takes place in mooladhara chakra, the energy makes headway through sushumna up to ajna chakra.

Mooladhara chakra is just like a powerful generator. In order to start this generator, you need some sort of pranic energy. This pranic energy is generated through pranayama. When you practise pranayama you generate energy and this energy is forced down by a positive pressure which starts the generator in mooladhara. Then this generated energy is pushed upward by a negative pressure and forced up to ajna chakra.

クンダリニーはムーラーダーラチャクラで覚醒し、スシュムナーを通ってアージュニャーチャクラに至ります。

ここではムーラーダーラチャクラの覚醒の概要が説明されており、ムーラーダーラチャクラは発電機のようなもので、プラーナーヤーマによってプラーナを下方へ加圧的(positive pressure)に送り込むことによって起動し、その発電されたエネルギーは上方のアージュニャーチャクラへと減圧的(negative pressure)に自然と(forced)上がっていくというように説明されています。

クンダリニー覚醒の際、このようにプラーナーヤーマやムドラーの圧を使って起動することができますが、その動きは本当に別の意志を持っているかのように自然に巻き起こってくる感覚なので、十分に準備が必要です。

用語:プラーナーヤーマ
用語:ムドラー

その際に、スシュムナーが十分に浄化されて機能している状態でないと、ゴーピ・クリシュナ氏が体験したような悲惨な目にあうということでしょう。そのため、スシュムナーを活性化させることは、クンダリニー覚醒と同じ重要性を持ちます。

「意図せず起動してしまった」ときに、彼が用いていた技法は、ハタヨーガのようなプラーナーヤーマではなく純粋な観想法であったようですが。ひどい状態から抜け出すきっかけになったのは、イダーとピンガラーのバランスだったようです。

「クンダリニー」ゴーピ・クリシュナ(著)

When only ida and pingala are active and not sushumna, it’s like having the positive and negative lines in your electrical cable, but no earth. When the mind receives the three currents of energy all the lights start working, but if you remove the earth wire, the lights will go down. Energy flows through ida and pingala all the time, but its effulgence is very low.

イダーとピンガラーは電線のマイナスとプラスのようなもので、スシュムナーはアース線のようなものであると説明されています。イダーとピンガラーは常に働いていますが、スシュムナーが働いていないと、使える電流はとても弱いものになってしまうというようにたとえられています。

The whole science of kundalini yoga concerns the awakening of sushumna, for once sushumna comes to life, a means of communication between the higher and lower dimensions of consciousness is established and the awakening of kundalini occurs. Shakti travels up sushumna to become one with Shiva in sahasrara.

改めて、クンダリニーヨーガは全てスシュムナーの覚醒に関わっていると説明されます。スシュムナーが開通すると、高次と低次の意識の間の関係性が確立され、クンダリニーの覚醒が起こるといわれます。

クンダリニーを表す「シャクティ」は女性的な力であり女神パールヴァティを表しており、パールヴァティが夫のシヴァがいるサハスラーラへと至って合一するというイメージで描かれます。

クンダリニーは架空のものではなく、電気生理学的なものである

Kundalini awakening is definitely not fictional or symbolic; it is electrophysiological! Many scientists are working on this, and Dr. Hiroshi Motoyama of Japan has developed a unit by which the waves and currents of energy which accompany the awakening of kundalini can be recorded and measured.

多くの科学者がクンダリニーについて研究し、本山博氏の開発した機器によってそれはエネルギーの流れや波として測定できたと説明されています。

ここで本山博氏の名前がいきなり出てきたので、日本人がインド人のヨーガ研究に貢献していたということに私は最初ちょっと驚きました。二人にはかなり親しい交流があったように思えます。

このあたりの話は第4章などで出てきます。

植物が育つように

When the roots of a plant are watered properly, the plant grows and its flowers bloom forth beautifully. Similarly, when kundalini awakening occurs in sushumna, awakening occurs in all the stages of life. But if awakening only occurs in ida or pingala or in one of the other centers, it is by no means complete. Only when kundalini shakti awakens and travels up the sushumna passage to sahasrara is the entire store of higher energy in man unleashed.

適切な土壌で適切な水を与えれば植物は自然と育ち花を咲かせるように、覚醒は人生の中で起こりうるものですが、イダー・ピンガラーや一部のチャクラが覚醒しただけでは、完全な覚醒とは言えません。

クンダリニーがスシュムナーを駆け上がりサハスラーラに至ってこそ、通常の人間が解き放てない高次元のエネルギーが使えるようになるといわれます。

上下反対に生えた樹

In the 15th Chapter of the Bhagavad Gita there is a description of the ‘imperishable tree’ which has its roots at the top and its trunk and branches below, growing downwards. He who knows this tree knows the truth. This tree is existing in the structure and function of the human body and nervous system. One must know and climb this paradoxical tree to arrive at the truth. It can be understood in this way: the thoughts, the emotions, the distractions and so on, are only the leaves of this tree whose roots are the brain itself and whose trunk is the spinal column. It is said that one has to climb this tree from the top to the bottom if he wishes to cut the roots.

植物の喩え話がでてきましたが、バガヴァッドギーターの15章では、「不滅の樹(アシュヴァッタ樹・菩提樹)」として、上に根があり下へ向かって幹や枝が生え、下向きに成長していく樹が説明されています。この樹の意味を知る者は、真理を知るといわれます。

実際バガヴァッドギーターでは、上にも下にも伸びる樹であるが物質世界ではそのように認識されない、と説明され、その根を堅固な無執着の斧で断つべしというように示されます。

参考:バガヴァッドギーターとは 〜様々なヨーガや宗教哲学を統合した聖典〜

サティヤナンダ氏の説明では、この樹は人間の体・神経の構造を表しているといいます。

思考や感情などは結局のところ、この樹の葉にすぎないものであり、その根は脳にあり、その幹は背骨を表しているといいます。その根を断ち、真理を知るためには、根がある上のほうへと上っていく必要があります。

This tree seems to be completely topsy-turvy, yet it contains the essence of all occult truth and secret knowledge. It cannot be understood intellectually, but only through progressive spiritual awakening, for spiritual understanding always dawns in a way which is paradoxical and irrational to the faculty of intellect. This same tree is called the ‘Tree of Life’ in the Kabbalah and the ‘Tree of Knowledge’ in the Bible. Its understanding forms the basis of both Christian and Judaic religious traditions, but unfortunately it has been completely misunderstood by and large, for a very long time.

この逆向きの樹は、全ての神秘的な真実や知恵を含んでいるといわれていますが、それを言語的に理解するのは難しいといわれます。これを理解するには、スピリチュアル的な覚醒を要し、通常の言語的な理解を超えた非言語的な道によって成される必要があります。

サティヤナンダ氏は、この樹はカバラーでは「生命の樹」、聖書では「知恵の樹」と呼ばれ、キリスト教とユダヤ教それぞれで伝統的なシンボルとされているが、その理解は完全に大きく誤った状態で長い年月が経っている、と述べています。

カバラーでは「セフィロトの木」と呼ばれるシンボルで「生命の樹」ともよく呼ばれますが、知恵の樹とともに示されていた創世紀の生命の樹とは別のものであるとされる場合もあれば、同じものであるとされる場合もあるようです。それなら知恵の樹とは?これも知恵の樹?と、ツッコミどころがありますが、ここでは名称について詳しくつっこむのはやめておきます。個人的には、生命&知恵どちらの真理も含んでいる図形のように思えます。

生命の樹については私も研究してきましたが、とても深い意味が込められています。ここで言われているように、言語的な説明では全てを理解することはできません。

たしかにこの生命の樹も、上から下へ向かって物質世界の顕現へ向かっていくような構造になっています。樹の上に無があり、一番下の第10セフィラー「マルクト」が物質世界を表します。

ちなみにエヴァンゲリオンにも出てきますね。

昔から重要なシンボルとして用いられてきたものですので、もし興味のある方は、カバラーに関する本を読んでみると良いかと思います。ざっと理解するだけであればWikipediaでもいいかもしれません。「生命の樹」あるいは「セフィロトの木」で調べるとたくさん情報がみつかります。

私が最初に知ったのは、魔術について調べていたときでした。アレイスター・クロウリーのように魔術を使っていた人々も修行法としてラージャヨーガを推奨していたりしたことを知り、ヨーガと魔術の関係性を感じていた頃です。以下の本は、神智学のアストラル体やエーテル体の理解にも参考になりますし、生命の樹について簡潔に説明しています。

「魔法修行―カバラの秘法伝授 (mind books)」W.E.バトラー (著), 大沼 忠弘 (翻訳)

上の本で、生命の樹をしっかり理解するにはこの本を読んでおけ!と示されていたのが以下の本です。詳しすぎるぐらいにとても細かく各セフィラーやパスについて解説されています。

「神秘のカバラー」ダイアン・フォーチュン (著), 大沼 忠弘 (翻訳)

So it is that everybody who is trying to move from mooladhara to sahasrara is climbing to the root every time, and the root is at the top, the brain, the sahasrara. Mooladhara is not the root center at all. So if you are moving from swadhisthana to sahasrara or from manipura to sahasrara, then you are climbing to the root, which is at the top in sahasrara.

ムーラーダーラ(骨盤底)からサハスラーラ(頭頂・脳)へと至る道は、この樹の「根」へと「上る」ことであり、クンダリニーヨーガではそれを行っていくことになるということでしょう。

一番下に位置しているムーラーダーラチャクラは、「根」ではないということです。

この道においては、思い込みを捨て、屁理屈を捨て、言語的に理解しようとはしないことが大切です。

次記事:「クンダリニー・タントラ/サティヤナンダ(著)」を読む【12】第1章 4節-1:クンダリニーと脳の関係

前記事:「クンダリニー・タントラ/サティヤナンダ(著)」を読む【10】第1章 3節-3:ナディとは

参考文献

「Kundalini Tantra 英語版 ペーパーバック」 Swami Satyananda Saraswati (著)

「Kundalini Tantra 英語版 Kindle」 Swami Satyananda Saraswati (著)

「密教ヨーガ―タントラヨーガの本質と秘法」本山 博 (著)

「クンダリニー」ゴーピ・クリシュナ (著), 中島巌 (翻訳)

「Asana Pranayama Mudra Bandha 英語版」Swami Satyananda Saraswati (著)

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by 高橋陽介

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