ヨーガスートラを私なりに読み進めていくシリーズ。
英訳出典:http://yogasutrastudy.info/
サンスクリット語辞書:http://spokensanskrit.org/
訳者の略称は下記の通りです。
[SS]: Swami Satchidananda
[SV]: Swami Vivekananda
Sutra 4.1
जन्मौषधिमन्त्रतपःसमाधिजाःसिद्धयः॥१॥
janma-oṣadhi-mantra-tapas-samādhi-jāḥ siddhayaḥ ॥1॥
(読み)ジャンマ オーシャディ マントラ タパス サマーディジャーハ シッダヤハ
(訳)シッディ(超能力)は、前世における行・薬草・マントラ・タパス(熱意・苦行)・サマーディによって得られる。
[SS]: Siddhis are born of practices performed in previous births, or by herbs, mantra repetition, asceticism, or by samadhi.
[SS訳]: シッディは前世における実践、薬草、マントラ詠唱・禁欲・サマーディによって生まれる。
[SV]: The Siddhis (powers) are attained by birth, chemical means, power of words, mortification or concentration.
[SV訳]: シッディ(超能力)は誕生・化学的手段・マントラ・苦行・集中によって得られる。
Sutra 4.2
जात्यन्तरपरिणामः प्रकृत्यापूरात्॥२॥
jāty-antara-pariṇāmaḥ prakr̥ty-āpūrāt ॥2॥
(読み)ジャーティヤンタラ パリナーマハ プラクルティヤープーラート
(訳)異なる生物として生まれ変わることは、プラクリティ(自然界を構成する要素)の流入によってもたらされる。
[SS]: The transformation of one species into another is brought about by the inflow of Nature.
[SS訳]: 種の転変は、自然(プラクリティ)の流入によってもたらされる。
[SV]: The change into another species is by the filling in of nature.
[SV訳]: 異なる種への転変は、自然の流入によってもたらされる。
Sutra 4.3
निमित्तमप्रयोजकं प्रकृतीनां वरणभेदस्तु ततः क्षेत्रिकवत्॥३॥
nimittam-aprayojakaṁ prakr̥tīnāṁ-varaṇa-bhedastu tataḥ kṣetrikavat ॥3॥
(読み)ニミッタマプラヨージャカン プラクルティーナーン ヴァラナ ベーダストゥ タタハ クシャトリカヴァト
(訳)善行その他の行いは、自然界の流れを直接的に生み出すものではない。しかしそれらは自然界の進化を妨げる障害を破壊するものであり、農夫が水路を塞いでいる障害物を取り除くかのように、その本来の流れを導くのみである。
[SS]: Incidental events do not directly cause natural evolution; they just remove the obstacles as a farmer [removes the obstacles in a water course running to his field].
[SS訳]: 付随的な事象は、自然な進化を直接的に引き起こすものではない。それらは農夫のように障害物を取り除いて流れを導くだけである(水路を塞いでいる障害物を取り除いて畑に水を引き入れるように)。
[SV]: Good deeds, etc., are not the direct causes in the transformation of nature, but they act as breakers of obstacles to the evolutions of nature, as a farmer breaks the obstacles to the course of water, which then runs down by its own nature.
[SV訳]: 善行その他は、自然の流れを直接的に生み出すものではない。しかしそれらは自然の進化を妨げる障害を破壊するものであり、農夫が水路を塞いでいる障害物を取り除くかのように、その自然の流れを導くのみである。
解説・考察
第3章でたくさん挙げられてきたシッディ(超能力)、それを得るための方法が4.1節で述べられています。
- 前世における行
- 薬草・化学的手段
- マントラを唱える
- タパス(熱意・苦行)
- サマーディ
5つのパターンが挙げられていますが、サッチダーナンダ氏の解説によればサマーディによって得られるもの以外は不自然であるといいます。
生まれながらにしてスゴい能力を持っている人、というのは前世に行ったことが原因でシッディを得ているといいます。しかし、その人はまだ解脱に至ってはおらず(生まれてきているので)、シッディを持っているのは不自然であり、これは今生で解脱に至るためには障害にもなりかねません。
薬草や覚醒剤などを使ってシッディらしきものを手に入れる人もいますが、これはもちろん長続きはしません。
マントラを唱えることやタパスを行うことは、サマーディにつながる行ではありますが、これらだけで得られたシッディは、おそらく修行半ばにして現れる障害なのかもしれません。中途半端な状態で得られたシッディは、第3章で繰り返し注意されたように、ゴールを一気に遠ざけてしまいます。
4.2節では輪廻について述べられ、自然界を構成する要素が「流入する」ことによって新しい生物に生まれ変わると述べています。イメージとしては、様々な行いによって「型」が作られて、そこに原料が流し込まれて自然に新しい生がつくられるというな感じであると説明されます。
ここではカルマという言葉は使われていませんが、行為→結果という流れが当然のように生まれるという考え方が感じ取れます。
4.3節では、本来その自然界の流れとは進化の方向へむかっており、様々な行いはその流れを直接的に生み出すわけではなく、流れを邪魔しているものを破壊するのであると説明しています。
瞑想やアーサナなどヨーガの実践全体の特徴として「余計なことをしないようにして、本来の状態にもどる」という流れが感じ取れますが、そのイメージを改めて説明しているのだろうと思います。
≫ヨーガスートラ解説 4.4-4.6
≪ヨーガスートラ解説 3.51-3.56(3.50-3.55)