ハタヨーガの古典の中で、最も体系化されているとして重要視されているハタヨーガプラディーピカー。
今回は、シャットカルマ(6つの浄化法)と、そこに1つ加えられているガジャ・カラニーについて示されている部分を紹介します。
以下、日本語訳は「ヨーガ根本経典/佐保田鶴治」から引用しています。
シャットカルマを行うべき人
2.21 肥満体質と粘液体質の人は調気法を修習する前に、六つの作法を正しく行なうべし。その他の人はこれらの作法を行う必要はない。何故かといえば、三つの体質が平均しているからである。
脂肪が多い人、カパ体質の人が行うべきと示されています。
たしかにシャットカルマの中には、過剰な粘液を排出するような行法が多いので、水分の多いカパ体質の人には効果的なイメージがあります。
逆に、ヴァータ体質の人がやたらに行うと、ただでさえ少ない粘液を減らしてしまうので、逆に健康を害してしまうということでしょう。
ただ、個別の行法の効果をみてみると、ヴァータやピッタの人にも効果的であるというものがいくつかあるようです。
アーユルヴェーダのパンチャカルマもそうですが、体質にあったものを選んで行うのが良いようです。これも最初はどう選んだらいいのかわからないので、師匠に指示されたものを行いなさいという意図なのかもしれません。
シャットカルマの内容と効果
それぞれの内容については、下記の記事で既に紹介しました。
比較的簡単にできるのは、ネティ・トラタカ・カパラバティの3つでしょう。
ネティ(ネーティ)は鼻の洗浄(≫ネティのやり方)。
2.30 ネーティの作法は頭の中を清め、霊的な直観を与え、肩より上に生じたいろいろな病気の類をすみやかに無くする。
トラタカ(トラータカ)は、ロウソクの炎などの対象を涙が出るまで見つめ続け、限界がきて目をつぶったら、今度は暗闇のなかにロウソクのイメージを映し続ける、という行法。
2.32 この作法は目の諸病を去り、怠惰などを封ずる。トラータカ作法は黄金の小宮のように秘蔵すべきである。
カパラバティ(カパーラバーティ)は鼻から強く息を吐き出して気管や鼻を浄化する行法です(≫カパラバティのやり方)。
2.35後半 粘液質の過剰からくる疾患を消す。
これらは私も日常的にやっています。
ハタヨーガプラディーピカーの中でのネティは、ひもを鼻に入れて洗浄するスートラネティを示していますが、これは結構難しいので、生理食塩水を使ったジャラネティがオススメです。
ガジャ・カラニー(クンジャル・クリヤー)
2.38 コーモンをすぼめて、アパーナ気をノドまで引き上げ腹中にある物がらを吐くという練習を段階的に積み上げていって、気道の組織を自分の支配下に置く。この法はハタに通じたヨーギーによって、ガジャ・カラニー(象のしぐさ)とよばれる。
インドで実践したときは「クンジャル・クリヤー」と呼んでいましたが、塩水をひたすら飲んだあとに胃から吐き出して、胃と食道を洗浄するという行法でした(つらい)。
とはいえ、長い布を飲み込んで吐き出すダウティよりは簡単でした。
ネティにしてもクンジャルクリヤーにしても、適切な塩水を作って行えば痛みなどはないです。
しかし胃からものを吐き出すというのは、いつも使っていない筋肉を使う(意図的に使うというか、自動的に使われるような)感じがします。
「シャットカルマ(6つの浄化法)」のセットは他のハタヨーガの教典でも示されていますが、ゲーランダサンヒターではこのクンジャルクリヤーにあたるものはダウティの中のバリエーションとして示されています(参考文献:続・ヨーガ根本教典)。
ゲーランダサンヒターはカパラバティも片鼻バージョンがあったり、アーサナも32種類に増えていたり、いろいろとバリエーションを増やしているようです。
また、ハタヨーガプラディーピカーではプラーナーヤーマの章でいきなり浄化法が示されて少し違和感がありますが、ゲーランダサンヒターではアーサナよりも先にシャットカルマが示されていて、このほうがしっくりくる感じはあります。
ゲーランダサンヒターについては、以下に概説記事を書きました。
≫ハタヨーガプラディーピカー概説 2.39〜2.47 〜プラーナーヤーマの種類・バンダの使い方〜
≪ハタヨーガプラディーピカー概説 2.12〜2.20 〜プラーナーヤーマの効果と深め方〜
参考文献
「サンスクリット原典 翻訳・講読 ハタヨーガ・プラディーピカー」菅原誠 (著)
「Asana Pranayama Mudra Bandha 英語版」Swami Satyananda Saraswati (著)