前回、アーサナの歴史について簡単に書きました。
≫アーサナの簡単な歴史
ところでアーサナ(ヨガのポーズ)が紹介されるときは「静止している形(静的アーサナ)」で示されることが多いため、ヨガというのは「ポーズをとって、じっとしているもの」というイメージを持っている方も多いと思います。
しかし実際は、アーサナに入り・終わるために、「ヴィンヤサ」という呼吸と動きが指示され、それらを含めた一連の流れとしてアーサナを行うのが一般的です。
「ヨギ(ヨガ実践者)よ、ヴィンヤサを行うことなく、アーサナを行うなかれ」
とも伝わっているように、アーサナの形をいきなり真似しようとするのではなく、ヴィンヤサを行って適切にアーサナに入って出るほうが、怪我もしにくく効果的です。
さらに、日本で行われることは少ないのですが、そもそも静止しない、動くアーサナ(動的アーサナ)も存在します。
これらについて、効果や注意点などをまとめてみます。
ヴィンヤサの例
現代の多くのヨガレッスンで行われている「太陽礼拝」、これはヴィンヤサの代表例です。
ヴィンヤサとは簡単に言うと、呼吸に合わせて動くことです。
「ヴィンヤサヨガ」や「フロー」といったヨガは、レッスン全体がヴィンヤサでつながっているものです。
太陽礼拝はいくつかのアーサナから構成され、アーサナに入るときにそれぞれ呼吸が指示されます。
たとえばシヴァナンダヨガの太陽礼拝の場合、最初に両腕を上に挙げて胸を反らすアーサナは「吸う」で入り、
- 次の前屈のアーサナは「吐く」で入ります。
ヴィンヤサの効果・注意点
ヴィンヤサを適切に行うと、雑に呼吸をしてアーサナを行うよりも、より深く行えるというのが実感できると思います。
呼吸と動作を両方覚えるのが大変!という方が多いですが、より深くアーサナを行えるのはどの呼吸なのか、比べてみると自分で判断できるようになります。
動作を先に覚えて呼吸を当てはめるのも最初は良いと思いますが、本来は「呼吸が動作を導く」というやり方にしていけると良いでしょう。
注意点としては、動くときに「勢いや反動を使わない」ということです。
とくにアシュタンガヨガの太陽礼拝におけるジャンプバックやジャンプスルーは、実際はほとんど「ジャンプ」しているわけではなく、体幹の筋肉を使って体を持ち上げています。
形だけ真似ようとしてジャンプしていると、いつか足を怪我するかもしれません。筋力が足りない場合は、ジャンプせずに別のやり方を教わって練習するほうが良いでしょう。
動的アーサナの例
ヴィンヤサも動的アーサナとも捉えられますが、どちらかというと「静的アーサナに適切に入って・出るための動作」「あるいは静的アーサナ同士をつなぐ動作」と考えておくと良いかと思います。
それに対して、動きそのものがアーサナである動的アーサナも存在します。
代表例は、とても効果的な準備運動として行われる「パワンムクターサナ」シリーズです。
≫パワンムクターサナ1(全身の関節を動かす)
≫パワンムクターサナ2(体幹の筋肉・消化器系を活性化)
≫パワンムクターサナ3(背骨・エネルギーラインを整える)
動的アーサナの効果・注意点
パワンムクターサナには、体育の準備体操のような動きや、ピラティスとほとんど同じ動きが含まれていたり、ちょっとエクササイズ感がありますね。
なんとなくヨガ(日本で行われている、欧米経由の)っぽくないからやりたくないなーと思われる方もいるかもしれません。
私が最初に動的アーサナを取り入れようと思ったのは、「力を抜く」必要性を感じたからです。
静的アーサナを形だけ真似して行おうとすると、どうしても人それぞれ癖が現れて、いつも決まった場所に力が入ってしまい、結局深まらないことが多いように感じます。
余計な力を抜くためには、「揺らす」という動作が有効です。
世界は常に動いているので、何事も「止めよう」とするのは、とても難しいことで、むしろ動くよりもエネルギーを必要とする場合もあります。
静止するアーサナに入るときも、流れに任せて余計な力を抜いていった末に、「おさまる」ような感覚で入っていくのが自然なような気がします。
(そして正確には、完全に「静止する」わけではありませんね。樹が常に揺れながら立っているように。)
揺らす幅や速さは、柔軟性や体調や環境(気温など)によって使い分ける必要があります。
動的アーサナは、体の各関節において「揺らす」コツを教えてくれます。
注意点としては、やはり勢いや反動を使わないことです。
自分の筋力で支えられる範囲で、怪我をしないように少しずつ可動域を広げていくようにしましょう。
ヴィンヤサ・動的アーサナの練習法
ヴィンヤサや動的アーサナは動きと呼吸を伴うので、写真や文章だけで理解するのは難しいかもしれません。
自分にあった、効果的で怪我をしにくいやり方を身につけるには、正しいやり方を教わって、繰り返す練習する必要があります。
とはいえ、やり方自体は秘密にされているわけでもなく、YouTubeでも本でも知ることはできますので、ひとまず試してみるのも良いかもしれません。
癖が現れてしまったり、ついつい浅く適当に済ませてしまったり、痛みがあったり、違和感を感じるようであれば、まずはしっかりレッスンを受けてから自己練習してみるようにしましょう。