オンラインレッスン ヨーガスートラ日本語訳
ヨーガスートラ解説 2.28-2.32 〜アシュターンガヨーガとヤマ・ニヤマ〜

ヨーガスートラ解説 2.28-2.32 〜アシュターンガヨーガとヤマ・ニヤマ〜

ここでやっと「アシュタンガヨガ」や「アーサナ」が出てきます

ヨーガスートラを私なりに読み進めていくシリーズ。

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英訳出典:http://yogasutrastudy.info/
サンスクリット語辞書:http://spokensanskrit.org/

訳者の略称は下記の通りです。
[SS]: Swami Satchidananda
[SV]: Swami Vivekananda

Sutra 2.28 アシュターンガヨーガ(8支則のヨーガ)

गाङ्गाऽनुष्ठानादशुद्धिक्षये ज्ञानदीप्तिराविवेकख्यातेः॥२८॥
yoga-aṅga-anuṣṭhānād-aśuddhi-kṣaye jñāna-dīptir-āviveka-khyāteḥ ॥28॥

(読み)ヨーガーンガーヌシュターナード アシュッディ クシャイェー ンニャーナ ディープティラーヴィヴェーカ クャーテーヘ

(訳)8支則のヨーガ(アシュターンガ・ヨーガ)を実践することで、不純は次第に遠ざかり、知の夜明けが訪れ、識別知が導き出される。

[SS]: By the practice of the limbs of Yoga, the impurities dwindle away and there dawns the light of wisdom, leading to discriminative discernment.

[SS訳]: 各部分のヨーガを実践することで、不純は次第に遠ざかり、知の夜明けが訪れ、識別知が導き出される。

[SV]: By the practice of the different parts of Yoga the impurities being destroyed knowledge becomes effulgent, up to discrimination.

[SV訳]: 各項目のヨーガを実践することで、不純は破壊され、知は光り輝き、識別知へと達する。

Sutra 2.29 アシュターンガヨーガの内容

यमनियमासनप्राणायामप्रत्याहारधारणाध्यानसमाधयोऽष्टावङ्गानि॥२९॥
yama niyama-āsana prāṇāyāma pratyāhāra dhāraṇā dhyāna samādhayo-‘ṣṭāvaṅgāni ॥29॥

(読み)ヤマ ニヤマーサナ プラーナーヤーマ プラティヤーハーラ ダーラナー ディヤーナ サマーダーヨー シュターヴァンガーニ

(訳)8支則のヨーガとは以下の項目で成り立つ。1:ヤマ(禁戒)、2:ニヤマ(勧戒)、3:アーサナ(姿勢)、4:プラーナーヤーマ(呼吸制御)、5:プラティヤーハーラ(感覚抑止)、6:ダーラナー(集中)、7:ディヤーナ(瞑想)、8:サマーディ(三昧、合一、超意識状態)

[SS]: The eight limbs of Yoga are:

1) yama (abstinence)
2) niyama (observance)
3) asana (posture)
4) pranayama (breath control)
5) pratyahara (sense withdrawal)
6) dharana (concentration)
7) dhyana (meditation)
8) samadhi (contemplation, absorption or super-conscious state)

[SS訳]: 8支則のヨーガとは以下の8つである。1:ヤマ(禁戒)、2:ニヤマ(勧戒)、3:アーサナ(姿勢)、4:プラーナーヤーマ(呼吸制御)、5:プラティヤーハーラ(感覚抑止)、6:ダーラナー(集中)、7:ディヤーナ(瞑想)、8:サマーディ(熟考、併合、超意識状態)

[SV]: Yama, Niyama, Asana, Pranayama, Pratyahara, Dharana, Dhyana, Samadhi, are the limbs of Yoga.

[SV訳]: ヤマ、ニヤマ、アーサナ、プラーナーヤーマ、プラティヤーハーラ、ダーラナー、ディヤーナ、サマーディが、8支則のヨーガである。

Sutra 2.30 ヤマ(禁戒)

अहिंसासत्यास्तेयब्रह्मचर्यापरिग्रहा यमाः॥३०॥
ahiṁsā-satya-asteya brahmacarya-aparigrahāḥ yamāḥ ॥30॥

(読み)アヒンサー サティヤーステーヤ ブランマチャリヤーパリグラハーハ ヤマーハ

(訳)ヤマ(禁戒)は非暴力・誠実・不盗・自制・不貪によって成り立つ。

[SS]: Yama consists of non-violence, truthfulness, non-stealing, continence, and non-greed.

[SS訳]: ヤマは非暴力・誠実・不盗・自制・不貪によって成り立つ。

[SV]: Non-killing, truthfulness, non-stealing, continence, and non-receiving, are called Yama.

[SV訳]: 非殺生・誠実・不盗・自制・不貪の5項目がヤマと呼ばれる。

Sutra 2.31 ヤマは常に守られるべし

जातिदेशकालसमयानवच्छिन्नाः सार्वभौमा महाव्रतम्॥३१॥
jāti-deśa-kāla-samaya-anavacchinnāḥ sārvabhaumā-mahāvratam ॥31॥

(読み)ジャーティ デーシャ カーラーサマヤーナヴァッチンナーハ サールヴァバーウマー マハーヴラタン

(訳)これらの偉大な誓約は普遍であり、階級・場所・時間・環境に限定されるものではない。

[SS]: These Great Vows are universal, not limited by class, place, time or circumstance.

[SS訳]: これらの偉大な誓約は普遍であり、階級・場所・時間・環境に限定されるものではない。

[SV]: These, unbroken by time, place, purpose, and caste, are (universal) great vows.

[SV訳]:これらは、時間・場所・目的・身分によって破壊されない、(普遍の)偉大な誓約である。

Sutra 2.32 ニヤマ(勧戒)

शौचसंतोषतपःस्वाध्यायेश्वरप्रणिधानानि नियमाः॥३२॥
śauca saṁtoṣa tapaḥ svādhyāy-eśvarapraṇidhānāni niyamāḥ ॥32॥

(読み)シャウチャ サントーシャ タパハ スヴァーディヤーィエーシュヴァラプラニダーナーニ ニヤマーハ

(訳)ニヤマ(勧戒)は、清浄・知足・熱意・自己研鑽・神への祈念(帰依)によって成り立つ。

[SS]: Niyama consists of purity, contentment, accepting but not causing pain, study of spiritual books and worship of God [self-surrender].

[SS訳]: ニヤマは清浄・満足・苦痛を受け入れるが生み出さないこと・霊的な書物を研究すること・神への祈念(帰依)によって成り立つ。

[SV]: Internal and external purification, contentment, mortification, study, and worship of God, are the Niyamas.

[SV訳]: 内的そして外的な清浄・満足・苦行・研究・神への祈り、の5つがニヤマである。

解説・考察

ここでようやく、現代ヨガでも少しなじみのあるアシュタンガヨガ(アシュターンガヨーガ)が出てきました。

現代ヨガでは「たくさん動くヨガ流派」として捉えられることの多い「アシュタンガヨガ」は、もともとここで説明される8項目を示していました。

この8支則を日常的に実践するためには、一日10数時間かけなければできなかったので、元々は出家して修行している人向けのものでした。それを、家長(仕事もしている一般的な人)が一日2時間程度で実践できるようにと作られたのがヴィンヤサヨガであり、現代に残るアシュタンガ・ヴィンヤサ・ヨガです。

≫アシュタンガヨガ(ハーフプライマリー)のポーズ内容・順番
≫アシュタンガヨガ(フルプライマリー)のポーズ内容・順番

ヴィンヤサの流れの中で、8支則を実践することを意識するのが本当の意味でのアシュタンガ・ヴィンヤサ・ヨガであり、まずは「非暴力」自分にも周りの人にも苦痛を与えないように実践しましょう、といった感じで具体的に日々のヨガ実践にも活かしていける内容だったので、難解なヨーガスートラの中でもこの8支則の部分だけがクローズアップされることが多いのでしょう。

ヤマ・ニヤマの各項目に関する解説は以前の記事にも書いてありますので、参考にしてみてください。

≫ヨーガスートラが示す、第1支則「ヤマ」を実践する意味
≫ヨーガスートラが示す、第2支則「ニヤマ」を実践する意味

ここで2.31節で出てくる「階級に関係なく守られるべし」というところに注目してみます。

インドは長い歴史の中でカースト制が存在してきましたが、ヨーガは必ずしもバラモン階級の間だけで広まっていったものではなく、ヨーガスートラが唯一の教典ではないことがこの節から感じ取ることができます。

たとえばウパニシャッドなどを読んでみると、クシャトリアがバラモンに対して教えをとくという場面もたくさん出てきたり、階級間や宗教間の関係性などを考えながらこれらの文献を読んでいくと、淡白に見えた短文の中に「人間味」が感じられるようになると思います。

結局言葉として表した時点で真理は隠れてしまうとヨーガスートラ自体も述べているように、そういった人間臭さも含めて全ては「ヒント」であるのだと思います。

≫ヨーガスートラ解説 2.33-2.34
≪ヨーガスートラ解説 2.23-2.27

ヨーガスートラ日本語訳書籍

「インテグラル・ヨーガ パタンジャリのヨーガ・スートラ」スワミ・サッチダーナンダ (著), 伊藤 久子 (翻訳)

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高橋陽介

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