「ヨガにゴールはあるんですか?」というご質問いただいたので、ひとまず小難しい哲学は省きつつ、ポーズに関するところから簡単に書いておこうと思います。
ヨガポーズ(アーサナ)は1つの小さなゴール
「ポーズができるようになること」はわかりやすい目標になりますね。
しかし、1つのポーズができるようになったら次のポーズに挑戦したくなり、その道は無限に広がって続いていきます。
じゃあ「一番難しいポーズってどんなのですか?」と聞かれることもありますが、どのポーズが難しいかは、人の心身の特性によっても異なります。
自分にとって「一番難しいポーズ」を探していくのも、興味深い旅かもしれませんね。
難しいポーズにトライするためには、まず「今の時点で、練習したらできそうなポーズ」を探して、練習するのが良いでしょう。これが手近な一つの小さなゴールになります。
ヨガの流派によってもポーズの種類や、深めていく順番などの考え方に違いがあります。
たとえばアシュタンガヨガはポーズひとつひとつの順番が厳しく決まっていて、順番通りにできるようになっていきましょう、というつくりになっているので、手近なゴールがわかりやすいです。
シヴァナンダヨガは、動きのグループ(例えば前屈・後屈など)ごとに順番が決まっていますが、一人一人のレベルに応じてポーズを入れ替えて練習できるので、苦手な動きをじっくり克服していったり、自分の変化を観察するのに適しています。
「ポーズができた」とはどういうことか?
一人で練習していたり、大人数のスタジオの隅っこで練習していたりしていると、「できているのかわからない」という人も多いでしょう。
また、自分で「できた」と思っても、レッスンでは結構修正されることもあります。
しっかり直してもらうと、全く効果が変わったり、痛みを感じていた場所が楽になったりすることがあります。
ヨガを深めるには「師が必要」と昔から言われてきたのは、こういうところにも理由があるのでしょう。
信頼できる師に「(ある程度)できた」と判断してもらうのは、一つの基準になります(なぜ「ある程度」なのかは、次節にて。)。そして、より高度な新しいポーズを授けてもらう、という形で練習を進めていくのが、正しい進め方です。つまり、自分と相性の合う、信頼できる師を見つけることは、とーっても重要です。
そうやって教わりながら進めることで、無理に難しいポーズにトライしてしまったり間違ったやり方で怪我をしてしまったりすることも防ぐことができます。
とはいえ、ずっとつきっきりで教わるわけではありません。練習の大部分の時間は自主練です。
無理をしすぎていないか、知らず知らずのうちに楽をしていないか、自分を客観視する感覚を養うことが、とても大切です。
1つのポーズの中にもたくさんの小さなゴールがある
では師はどうやって「(ある程度)できた」と判断しているのか。
「ポーズができた」という状態をどう定義するかは、様々な基準があるでしょう。
たとえば、背中側で手をつなぐマリーチアーサナのような体の中で輪を作るようなポーズは「できた」の基準が定義しやすいですね。
しかし、実は手をつなげたから「できた」というものでもないのです。
手がつなげた時点で、新たな課題があることに気づきます。
指先ではなく手首をがっちりつかむためには肩〜腕の柔軟性が必要であることに気づいたり、前屈を深めてお腹が太ももにつくようにするにはハムストリングスの柔軟性と腹筋の力が必要だったり、まだまだ深められる要素が見つかってきます。
そしてダウンドッグのようなポーズは「できた」の基準がさらにはっきりしませんね。
こういうポーズにも、「肩がまっすぐになる」「腰が丸くならない」といったいくつかの基準はあり、これらのポイントを洗練させていくことでポーズの気持ちよさが全く変わってきます。
このように1つのポーズの中にもいくつかのゴールらしきものがありますが、深めていくうちに無限に洗練させていける要素が見つかってくるので、定義の仕方によっては、いつまでも「できた」に到達することはないでしょう。
あるポーズが「(ある程度)できた」と判断されて、その上級ポーズが授けられたとしても、「できたポーズ」はもう一生やらなくていいのかというと、そんなことはないということです。
つまり本当のところは、どこまで行っても「できた」は存在せず、より深く、より気持ち良く、無限に洗練させていくことができます。
本当のゴールとは
少なくとも体に関してはゴールがないということに気づき、受け入れることが、本当のゴールです。
つまり「体に執着しない」ということですね。
これはむしろ体というより、心の話になります。
ゴールのないものに対してどういう心で取り組んでいくか?
そして、どうやって執着を手放していくか?
こういったことに対する「心の実践方法」についても、ヨガの古典は教えてくれています。
長くなってきたので、続きは別記事に書きたいと思います。
一つだけ、考え方のコツを挙げておくとすれば、「一生かかっても極められない」→「一生楽しめる」と捉えてみると良いと思います。