アキレス腱がとても固まって滞っている人は多いですが、これをしっかり柔軟にしておくと、いろいろな流れが良くなり、慢性的な心と体の症状が改善するかもしれません。
学生の方は、体育の時間などでよくアキレス腱のストレッチをしているかと思いますが、大人になってからはアキレス腱を意識すること自体が少なくなっている人も多いかと思います。
とくにハイヒールをはいていると、足首は少し伸びた形で固定されるので、常にアキレス腱に負担がかかっています。
ハイヒールに限らず足首が固定されるような靴をはいていたり、歩き方に癖があったりすると、アキレス腱周りの足首・ふくらはぎ・すね・膝などに悪い影響が出てきます。
この記事では、アキレス腱に関する基礎知識や、アキレス腱を柔軟にするためのヨガポーズなどを紹介します。
ちなみにアキレス腱とは
アキレス腱とは、ふくらはぎ(下腿後面)の筋肉である腓腹筋とヒラメ筋が合流してかかとの後ろ側にくっついている部分にある腱です。
「腱」というのは、筋肉と骨をつないでいるところです。
ちなみに「腱」とよく混同される「靭帯」は、骨と骨を直接つないでいるもので、靭帯は通常あまり伸び縮みすることは少なく、動くための筋肉や腱とは目的が異なり、どちらかというと固定されていなくてはいけない・動きすぎてはいけない部分についていることが多いです。
筋肉に関する詳細や、関連するヨガポーズ・ストレッチ&トレーニング法などは、以下の画像から筋肉のページに飛べますので、参考にしてください。
アキレス腱をのばす意味・効果
血行を良くする、むくみをとる
足首をしっかり動かし、アキレス腱を柔軟にすることで、血行不良・冷え性やむくみなどの症状が改善するかもしれません。
アキレス腱が所属している腓腹筋・ヒラメ筋は、「第二の心臓」と呼ばれ、全身の血行に影響しています。
新鮮な血液を全身に送り出すのは、心臓のポンプの力で主に行われますが、老廃物などを含む血液が心臓へ戻ってくるときには、ふくらはぎをはじめとした全身の筋肉の働きも重要になります。
しっかり足首を日常的に動かしていれば、ふくらはぎの筋肉が使われるので問題はないのですが、ハイヒールなど足首が不自由になる靴、歩き方や立ち方の癖などによって足首が動かされず歪んでいたりすると、血の巡りは悪くなります。
扁平足・ハイアーチや、O脚・X脚の改善
歩き方・立ち方に癖があると、扁平足やハイアーチなどの足の歪みが生じたり、それに伴ってO脚・X脚などの膝〜股関節の癖にもつながります。
根本原因は「癖(意識の慢性的な偏り)」にあるので、改善するにはより繊細な「気づき」が必要になりますが、アキレス腱を柔軟にすることは、改善の大きなきっかけになるかもしれません。
アキレス腱をしっかりのばしたあとに歩いてみて、普段との違いを注意深く観察してみると良いでしょう。
「陽」の経絡を刺激し、やる気が出てくる
五月病、やる気が出ない、というとき、メンタル的な原因は体の硬いところと関係していることがあります。
ふくらはぎの真ん中に、むくみに効くツボ(経穴)である「承山」があります。このツボは、太陽膀胱経という経絡に属し、この経絡は目頭から背中の真ん中付近を通って足の小指の先までつながっている、最も経穴の多い経絡です。
人間はお腹側が「前」なので「重要」と認識して偏ってしまいがちですが、陰陽で考えると、背中側が「陽」です。四足動物で考えれば、背中側に太陽があたり、お腹側は影になりますね。とはいえどちらが重要というわけではなく、バランスが大切です。
その「陽」の経絡の中のひとつであり、様々な内臓を癒やすとてもたくさんの経穴を持っているのが膀胱経です。「膀胱」だけに関係しているわけではなく、全体的に流れを生み、排出したりする機能をコントロールしています。
目頭や眉間が固まっている人も多いかと思いますが、膀胱経の流れを見ると、目の使いすぎや眉間にシワをよせるようなストレが全身の「流れが滞っている系の症状」に関係があることがわかります。
アキレス腱を伸ばすことで、普段意識することの少ない背中側の「陽」の流れを整え、活気を生み、やる気が出てくるかもしれません。
4月に活動しすぎてやる気がなくなる5月病の原因と対策も、このあたりに鍵があるかもしれません。
アキレス腱を柔軟にするヨガポーズ・ストレッチ
足首まわし
シンプルに足首を曲げ伸ばししたり回したりするだけでも、アキレス腱には良い刺激になります。
同じ範囲で動かし続けているのではなく、少しずつ、深い大きな動きができるようにしていけると良いでしょう。
なかなか深い動きができない場合は、手で足先を持って手の力を加えながら足首をしっかり回してみるのも良いでしょう。
ダウンドッグ
アキレス腱〜太もも裏までを伸ばす定番のヨガポーズ。
ヨガマットがあるなら、肩こり改善などの他の効果も含めて、ダウンドッグはとても有効なポーズです。
定番ポーズではありますが、自分でうまくできているか確認するのが難しいポーズなので、効いているのかわからない・なかなか深まらないという人もいるかもしれません。その場合は、一度方向性をしっかり教わったほうが、効率的な練習ができるかと思います。
今回のテーマであるアキレス腱を伸ばすということだけにしぼるのであれば、片脚は膝を曲げて、アキレス腱を伸ばしたいほうの片脚はなるべく伸ばしてかかとを床につけようとする、というように練習するのも良いでしょう。
≫ダウンドッグ(アドムカシュヴァナーサナ・下向きの犬のポーズ)の効果とやり方動画・図解
ヴィラバドラーサナⅠ(戦士のポーズ1)
足を45°外方向に開いて接地するので、主にふくらはぎの外側を伸ばす効果があります。
ふくらはぎの外側、アキレス腱の外側は、とくに固まっていることが多いです。
スネには2本の骨があるのですが、外側の骨は細く、内側の骨は太いです。主に体重を支える役割は内側の骨、バランスをとる役割は外側の骨が担うのが自然なのですが、外側にずっと体重をかけて立ってしまっている人が多いです。
そのため細い骨で体重を支えるために、筋肉が固くなろうとしてしまいます。
このポーズを練習してふくらはぎの外側を柔軟にしつつ、普段から内くるぶしの下に体重を置くようにすると良いでしょう。
≫ヴィラバドラーサナⅠ(ウォーリアⅠ・戦士のポーズⅠ・英雄のポーズⅠ)の効果とやり方動画・図解
前屈のポーズ全般
前屈を練習すると、まず太もも裏の筋肉(ハムストリングス)が伸びます。さらにしっかり足首を曲げるようにすると、ふくらはぎも伸びます。
前屈をやっていてもふくらはぎが伸びていないなと感じる場合は、以下の点に注意すると良いでしょう。
立って行う前屈の場合、お尻が後ろに下がっていってしまうと、足首が十分に曲がっていないことになります。ふくらはぎもしっかり伸ばしたいのであれば、お尻がかかとの上(少しだけ後ろ)にあるように保つか、壁にお尻をつけて、かかとは壁から指2本ぶんくらい離した状態で前屈する練習をするのも効果的です。
座って行う前屈ポーズの場合、足首をしっかり曲げて、つま先を手前に引き寄せるという感覚で前屈していくと良いでしょう。
なかなか深まらない、そもそも前へ倒れられないという場合は、ベルトやタオルを土踏まずにひっかけて練習するのも良いかと思います。
重力をうまく使って前屈を深められるアルダハヌマーンアーサナも、ふくらはぎを伸ばすためには、足首をしっかり曲げるのを忘れないようにしましょう。足首が伸びていると、ふくらはぎはサボっています。
ハスタウッターナーサナ
後屈ポーズですが、足首をよく観察すると、足首は結構曲がっていてスネや太ももは前側へ移動しています。つまりこのポーズは、ふくらはぎが伸びていないとうまくいかないことがわかります。
まず手をあげる前に、お尻に手を当てて、少し前へ押し出すようにしながら背骨全体を反り、ふくらはぎは伸びて足首は曲がっていくということを意識して練習すると良いでしょう。十分に背骨全体を反ってから、下腹部を引き締めてアーチを支えながら、肩周りの力を使って腕を大きくバンザイできるようにしていきます。
≫ハスタウッターナーサナ(両腕を挙げて伸ばすポーズ・太陽礼拝アーチバック)の効果とやり方・図解
膝やすねでふくらはぎをマッサージ
私のレッスンでは冒頭によく行っていますが、ストレッチをする前後にふくらはぎをマッサージしておくのも効果的です。
座った状態で、ふくらはぎに反対側の膝を当ててマッサージしたり、正座の状態からスネをクロスして、上側のスネで適度に体重をかけながら下側のふくらはぎをマッサージします。筋肉を傷めないように、適度な圧をかけるようにしましょう。さするだけでも効果はあります。
寝る前などに行うと、疲労回復にもとても有効です。
より効率的に行い、元に戻りにくいようにするために
どんなエクササイズにも言えることですが、一部分だけに意識を向けてエクササイズを行っても、他の部分が一緒に変化していかないと、またすぐに元に戻ってしまいます。
一部分が変化すれば、必ず全体も変化します。
たとえばアキレス腱が柔軟になり、足首が柔軟になれば、首や頭も柔軟になります。足と頭は一番遠いところのように思えますが、必ず影響しています。
特に足は全身の土台なので、わずかな変化が全身に大きな影響を与えます。
高層マンションの土台が1°傾いたら、最上階への影響はとても大きいはずです。
できるだけ、全身に意識を向けながらヨガポーズやエクササイズを行うようにすると、より早く、元に戻りにくい変化を導けるようになるでしょう。