梵:अहङ्कार ahaṅkāra
英:ego, egoism, self-consciousness, individualization
日:エゴ、個別意識、自我意識、我想、我慢
アハンカーラの意味
アハンカーラとは「エゴ」「自我意識」などを意味する言葉。日本語では「我想」「我慢」などと訳されることもある。
アハン(aham)は「I」「私」を意味する代名詞である。
ヨーガの障害としてのアハンカーラ
ゲーランダサンヒターでは、冒頭1.4節にて「世にマーヤー(幻術)にひとしいきずなは無く、ヨーガよりもすぐれた力は無い。また、智恵にまさる味方は無く、我慢心よりも強い敵は無い。」と示し、佐保田氏は「我慢心」と訳したアハンカーラを、強い障害として挙げている。
ブランマンのみが唯一の実在であり、その他のものは全て幻(マーヤー)であるという不二一元(アドヴァイタ)を悟ることによって、エゴは消滅してブラフマンへ還ってゆく。
アハンカーラとアスミター
アハンカーラと似た概念として、「我想」「自我意識」など同じ言葉で訳されることもある「アスミター」がある。
アハンカーラは真我(プルシャ)が物質世界に個体として存在するための原理を表し、アスミターは心の作用としての自我意識を表していると言われる。
ヨーガスートラでは、ゴールに至るまでの5つの障害・煩悩(クレーシャ)を挙げ、その中にアスミターが含まれている。
- アヴィディヤー:無知
- アスミター:我想(エゴ)
- ラーガ:執着
- ドヴェーシャ:嫌悪
- アビニヴェーシャ:生命欲
また、最終的なゴールである無想三昧に至るまでの段階として、手放すべき心の作用を段階的に分けており、その最後にアスミターが含まれている。
- ヴィタルカ 論証性(尋)→ 粗大な対象(具象)、五感で感じ取れるもの
- ヴィチャーラ 反射(伺)→ 微細な対象(抽象)、「愛」「美」などといった概念
- アーナンダ 歓喜(楽) → 心そのものの純粋な働き、そこには「喜び」だけがあると言われる
- アスミター 自意識(我想)→ 「私」という意識のみ
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