手の少陽三焦経の役割
三焦は「決瀆(けっとく)の官」と呼ばれ、特定の器官を指すものではなく、飲食物を消化吸収し、それを気・血・津液と化して全身に行き渡らせ、不要なものを排泄させる働きをする。その働きと部分によって、上焦・中焦・下焦に分かれている。
上焦は横隔膜から上部の機能を指し、心・肺と関係が深く、主に体温調整作用を担う。「天の気」を司り、呼吸や、飲食物の受納を助け、体熱を発して体温調整を行う。
中焦は横隔膜から臍までの機能を指し、脾・胃と関係が深く、主に気血津液の調整作用を担う。「地の気」を司り、消化・運化の働きを助ける。
下焦は臍から下部の機能を指し、腎・膀胱・小腸・大腸などと関係が深く、主に輸瀉作用を担う。不要分を分離して、尿や便の排泄を助ける。
心理的にも、物事を受け入れて・分別して・処理するといったことを担うため、三焦に異常があると整理が苦手になったり雑念が多くなって鬱の症状が出たりする。そのため鬱に効くとされる経穴も多い。
体温調整作用を持つため、寒くなると無意識に二の腕の外側をこすることが多いが、ここに三焦経が通っている。
手の少陽三焦経の経穴一覧
TE1 関衝(かんしょう)
要穴:井金穴
穴性:清熱、開竅、利喉舌
TE2 液門(えきもん)
要穴:滎水穴
穴性:清頭明目、利三焦
TE3 中渚(ちゅうしょ)
要穴:兪木穴
穴性:開竅益聡、清熱通絡、理気解鬱
TE4 陽池(ようち)
要穴:原穴
穴性:疏風散熱、舒筋活絡
TE5 外関(がいかん)
要穴:絡穴
穴性:疏風清熱、利脇
TE6 支溝(しこう)
要穴:経火穴
穴性:疏三焦、利胸脇、通関開竅、活絡散瘀、調理蔵府
TE7 会宗(えそう)
要穴:郄穴
穴性:清熱開鬱、疏通経気
TE8 三陽絡(さんようらく)
穴性:開竅鎮痛、宣通気血
TE9 四瀆(しとく)
穴性:清咽喉、通耳竅
TE10 天井(てんせい)
要穴:合土穴
穴性:疏風清熱、通絡寧神
TE11 清冷淵(せいれいえん)
穴性:疏風散寒、通絡止痛
TE12 消濼(しょうれき)
穴性:清熱、疏経、活絡
TE13 臑会(じゅえ)
穴性:清鬱熱、通経絡、利関節
TE14 肩髎(けんりょう)
穴性:疏風湿、通経絡
TE15 天髎(てんりょう)
穴性:去風湿、通経絡
TE16 天牖(てんゆう)
穴性:清頭明目、利諸竅
TE17 翳風(えいふう)
穴性:散風熱、聡耳竅、通経絡
TE18 瘈脈(けいみゃく)
穴性:清熱、解痙、通竅
TE19 顱息(ろそく)
穴性:散風、通竅、鎮驚
TE20 角孫(かくそん)
穴性:清熱散風、清頭明目
TE21 耳門(じもん)
穴性:開竅益聡、疏通経絡
TE22 和髎(わりょう)
穴性:去風、通絡
TE23 絲竹空(しちくくう)
穴性:散風止痛、清頭明目
手の少陽三焦経に関連するヨガポーズ(アーサナ)
三焦経は手の薬指の先から手の甲を通り、腕の外側を通って耳の後ろを回って、眉毛の外側へつながっている。
いわゆる二の腕、上腕の外側の筋肉(上腕三頭筋)は生活習慣によってはなかなか使われないことも多く、冷えやすいところでもあるので、この周辺を使うアーサナにおいて意識すると良い。
参考文献
「ツボ単―経穴取穴法・経穴名由来解説・〔ユ〕穴単語集」坂元 大海 (著), 原島 広至 (著)