「現代ヨガの父」ことクリシュナマチャリア氏の主著である「ヨガマカランダ(ヨーガ・マカランダ)Yoga Makaranda」を読み進めていきます。
今回は、3.6節のシャットクリヤ(ダウティ・バスティ・ネティ・ナウリ・トラータカ・カパラバティ)のやり方に関する部分です。なかなか難しいものも含まれていて、この部分を読んだだけで実践するのは危険そうなため、今回は概要だけ紹介します。
引用部分は、特に記載のない限り以下の英語版(2006年)Yoga Makarandaを出典とします。
シャットクリヤの選択・実践
ここから6つの浄化法について説明されていて、かなり詳細にたくさんの技法が紹介されていますが、全てのヨーガ実践者が全ての浄化法を行う必要はないという文脈のように読み取れます。
たとえば、その人が今行っているヨーガの種類によって選択できるように、「これはラージャヨーガに属する」「これはハタヨーガである」といった注意書きが末尾に加えられているものが多いです。
また、ドーシャタイプによって選択する場合もあり、それぞれの行法の効果の記載の中には、特定のタイプの症状を改善するという内容が含まれていることもあります。特に、粘液が過剰になりやすいカパタイプに効果的な行法が多いようです。
ドーシャについては、以下のページなどを参考にしてください。
この節を読んで、「よし、自分も浄化法をやってみよう!」という人は少ないかと思いますが、クリシュナマチャリア氏がどんな浄化法を挙げていたのか、ひとまずざっと捉えておくのは良いかと思います。
詳細なやり方は、原著を参考にしてみてください。ただ危険な技法も含まれているので、もし実際にやってみる場合は、しっかり経験のある師匠に同伴してもらって行うのが良いでしょう。
1.ダウティ・クリヤ
ダウティは、ハタヨーガ・プラディーピカーでは「塩水に浸した長い布を飲んで吐き出して、胃と食道を浄化する行法」となっていますが、クリシュナマチャリア氏はそれだけではなく、ゲーランダ・サンヒターに記されている様々なダウティを用いています。
参考:ゲーランダサンヒター概説1.12-1.44 〜シャットカルマ、ダウティ〜
「dhautī ダウティー」という言葉自体の意味は「洗浄」というざっくりしたニュアンスで、ハタヨーガの行法としては、消化器系・呼吸器系の浄化のための幅広い行法を含むということになります。
以下の4分類のダウティがあり、ムーラ・ショーダナ・ダウティは1種類だけなので、全11種類ということになります。
- アンタル・ダウティ
- ヴァータ・サーラ・ダウティ
- ヴァリ・サーラ・ダウティ
- ヴァンヒ・サーラ・ダウティ
- バヒシュ・クリタム・ダウティ
- ダンタ・ダウティ
- ダンタムラ・ダウティ
- ジフワムラ・ダウティ
- カルナ・ダウティ
- カパラントラ・ダウティ
- フルド・ダウティ
- ダンダ・ダウティ
- ヴァーマナ・ダウティ
- ヴァストラ・ダウティ
- ムーラ・ショーダナ・ダウティ
それぞれ詳細に説明されているのですが、なかなか現代人が日常で実践するのは難しそうなので、ここではざっと概要を紹介するだけにしておきます。
アンタル・ダウティ
アンタル・ダウティは主に消化器系を浄化する行法ですが、「空気や水を口から飲み込んで、肛門から出す」といった難しそうなものが含まれています。
消化力を高める、心臓病に効果があるなどの説明があります。
ダンタ・ダウティ
ダンタ・ダウティは、歯や舌や耳を浄化する行法です。これはアンタル・ダウティよりは比較的実践しやすいかもしれません。舌の洗浄などは、現代でも好んで行っている人も多いようですが、行うべきかは諸説あるようですね。
口臭をなくす、歯を強くする、明瞭な発声が可能になる、難聴が治る、視力が回復する、といった効果が説明されています。
フルド・ダウティ
フルド(フルッド)は「心臓」の意味で、フルド・ダウティは心臓の周辺の浄化法です。
この中に、ハタヨーガ・プラディーピカーで示されていた、布を飲み込んで吐き出す行法も含まれています。食後に水をいっぱい口に含んで、しばらく上を向いてから吐き出す、といったシンプルな技法もあります。
効果の中には、ドーシャバランスを整えることに関連する説明が多く含まれています。
ムーラ・ショーダナ・ダウティ
ムーラは根元などの意味、ショーダナは浄化の意味ですが、ここでは肛門に指を入れてきれいに洗うというシンプルな行法が紹介されています。
便秘、消化不良などを改善するという効果が説明されています。
2.バスティ・クリヤ
バスティは腸を洗浄する行法で、腰まで水に浸かって、肛門から水を吸い込んで出すというやり方が一般的ですが、これもだいぶ難しい行法ですね。
ここでは、2つのバスティのやり方が紹介されています。
ジャーラ・バスティ
こちらが一般的に知られているバスティです。へそまで水に浸かり、肛門から水を吸い込んだ後、下腹部を収縮させて水を肛門から少しずつ押し出すという行法です。
糖尿病、泌尿器疾患、腸閉塞などが改善され、容姿が美しくなるといった効果が説明されています。
スタラ・バスティ
こちらは、気を肛門から吸い込み、お腹の中を回した後に押し出す、といった行法です。水や空気ではなく、ヴァーユ(気)を用いるところが、ジャーラ・バスティとの違いです。
便秘、消化不良などの症状が解消されるという効果が説明されています。
3.ネティ・クリヤ
ネティは鼻を浄化する行法ですが、一般的には、塩水を左右の鼻の間で通すジャーラ・ネティと、糸を鼻から口へ通すスートラ・ネティがあります。塩水を通す方法は、私もほぼ毎朝行っていて、以下の記事で紹介しています。
ただここでは、糸を使ったスートラ・ネティのやり方だけ紹介されていて、ジャーラ・ネティらしき技法は、後に出てくるカパラバティの中の一つとして紹介されています。
カパのバランスが崩れることによる多くの病を解消し、視力が向上し、ケーチャリー・ムドラーを習得しやすくなる、といった効果が説明されています。
ケーチャリー・ムドラーは、舌を口蓋の上に当てる、あるいは喉の奥に入れる、ハタヨーガの行法です。様々な呼吸法とともに組み合わせて行われることも多く、重要な技法として頻繁に登場します。
参考:ハタヨーガプラディーピカー概説 3.32-3.54 〜ケーチャリームドラーのやり方と重要性〜
4.ナウリ・クリヤ
ナウリは、片岡鶴太郎氏が行っていたことで有名になりましたが、腹直筋をぐるぐる回す、消化器系を浄化する行法です。
あらゆる病気を治し、消化力を強化する、といった効果が説明されています。
あらゆる病気に効くかはわかりませんが、たしかに強力な行法かと思います。私がお教えするときは、まずウディヤーナやアグニ・サーラ・クリヤといった技法で練習してもらうようにしています。
参考:バンダとは|ヨガポーズをキープするコツ・呼吸法の効果の高め方
5.トラタカ・クリヤ
トラタカ(トラータカ)は、ロウソクなどをじっと見つめて、まばたきをせずに、涙が出てきてもなるべく長時間保っておくという、眼を浄化する行法です。私もたまに夜に行っています。
あらゆる眼病を治癒し、視力を向上させ、シャーンバヴィー・ムドラー(眉間を凝視する行法)を習得する力を養い、遠視も予防する、といった効果が説明されています。
シャーンバヴィー・ムドラーは、眉間のチャクラの覚醒法などに用いられる重要な行法です。以下の記事などを参考にしてみてください。
参考:「クンダリニー・タントラ」を読む【41】第3章 4節:アージュニャーチャクラの覚醒方法
6.カパラバティ・クリヤ
カパラバティ(カパーラバーティ)は現代ヨガでもよく行われている呼吸法で、浄化法の一つでもあります。
参考:カパラバティ・プラーナーヤーマ(火の呼吸法のバリエーション)の効果・やり方
一般的には、腹式呼吸を強く速く行って、腹部をしっかり動かして息を吐き出す、といったやり方で行われますが、ここではそれとは異なり、空気ではなく水を吸い込んで出すといった技法も含み、3種類のカパラバティ・クリヤが紹介されています。
カパラバティ・クリヤを行うのに最適な時間は日の出前の早朝で、水を使うものはすべて、清潔で冷たい(温めていない)水で行うべきであるという説明が末尾に加えられています。
ヴュトクラマ・カパラバティ・クリヤ
鼻から水を吸い込み、口から吐き出すというシンプルな行法です。
痰が原因となるあらゆる病気を治すという効果が説明されています。
ヴァーマクラマ・カパラバティ・クリヤ
左の鼻孔から空気を吸い込み、右の鼻孔から吐き出し、次に右の鼻孔から空気を吸い込み、左の鼻孔から吐き出します。これを4回繰り返した後、左の鼻孔からきれいな水を吸い込みます。顔を持ち上げ、左の鼻孔を指で押さえ、頭を少し右に傾け、右の鼻孔から水を吐き出します。同様に、右の鼻孔から吸い込んだ水は、左の鼻孔から吐き出します。
これは、一般的なジャーラ・ネティ(鼻うがい・鼻洗浄)に近いようにも思えます。
痰の垂れ流し(鼻水)などの症状を予防し、また嗅覚を研ぎ澄ますといった効果が説明されています。
チットクラマ・カパラバティ・クリヤ
口から水を吸い込み、飲み込んでから鼻から吐き出します。これを23回繰り返します。
簡単に言いますが、だいぶ難しいですね。23回というのもなかなか多いです。
痰の病気を取り除き、老化を防ぎ、体に輝きを与えるといった効果が説明されています。
以上、シャットクリヤについて、ざっと紹介してきました。
ハタヨーガの「浄化」に対する執念は、すごいものを感じますね。どれだけ身体をキレイにしたいのか。
この後は、身体を機能させているヴァーユ(気の流れ)の説明があり、その後にハタヨーガの重要な行法であるムドラー(印)の説明に入っていきます。
次記事:(執筆中)
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