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ヨーガマカランダ概説【15】3.8節 20種類のムドラー

ヨーガマカランダ概説【15】3.8節 20種類のムドラー

84,000の疾患を予防するという、クリシュナマチャリア氏が選出した20種類のムドラー

「現代ヨガの父」ことクリシュナマチャリア氏の主著である「ヨガマカランダ(ヨーガ・マカランダ)Yoga Makaranda」を読み進めていきます。

参考:ヨガマカランダ(ヨーガ・マカランダ)の概要

今回は、3.8節の20種類のムドラーに関する部分です。

引用部分は、特に記載のない限り以下の英語版(2006年)Yoga Makarandaを出典とします。

Yoga Makaranda(無料PDF 3.9MB)

この記事の目次

ムドラーとは

ムドラーは「印」などを意味する言葉で、現代ヨガではチンムドラーのように手指で作る「手印」のイメージが強いですが、ハタヨーガのムドラーは体全体を使ったムドラーも多く、プラーナ・ヴァーユ(気の流れ)をコントールするために重要な行法となります。

After the nadis are cleaned by practising the shatkriyas, it is essential that everybody, respecting their body’s constitution, practise at least some of the twenty mudras for the following reasons: in order to keep the ten types of vayu moving in their appropriate respective nadis and performing their assigned activities without obstruction (as described in the earlier section); in order to prevent diseases from forming in the body; for the susumna nadi to be taken to and maintained in the brahmarandhram; and for the always wavering gaze to stop moving and become focussed in one place. It is for this reason that the mudras are described here.

シャットクリヤ(6つの浄化法)の実践によってナディが浄化された後、各自の体質を尊重しつつ、少なくとも20種類のムドラーのうちいくつかを実践することが不可欠であるといいます。

ムドラーを実践する理由は、以下のようなことが説明されています。

  • 10種類のヴァーユがそれぞれのナディを滞りなく流れ、割り当てられた役割を阻害されることなく果たすようにするため。
  • 体内に病気が発生するのを防ぐため。
  • スシュムナー・ナディをブラフマランドラに導き、そこに維持するため。
  • 常に揺れ動く視線を静止させ、一点に集中させるため。

ヴァーユについては、前の記事で10種類の名前と役割が説明されていました。

ブラフマランドラは、頭頂付近に位置する空洞のことを意味する場合が多いですが、クリシュナマチャリア氏は「頭頂」という説明をしています。身体の中央を通るスシュムナーは、最終的に頭頂へ到達します。

ムドラーは、ハタヨーガでは奥義のような位置づけで、アーサナ・プラーナーヤーマ・バンダを組み合わせた行法となりますが、教典によってその数や種類は様々です。

ハタヨーガプラディーピカーで示されているムドラーは10種類、ゲーランダサンヒターでは21(または25)種類、シヴァサンヒターではハタヨーガ・プラディーピカーと同じ10種類でした。クリシュナマチャリア氏は、20のムドラーを挙げています。

参考:ハタヨーガプラディーピカー概説 3.6-3.9 〜10種のムドラー〜

参考:ゲーランダサンヒター概説3.1-3.5 〜21(25)種のムドラー〜

参考:シヴァサンヒター概説【12】4.23-4.110 十種のムドラー

20種類のムドラーの名前は、以下の通りです。

  1. マハー・ムドラー
  2. ナボー・ムドラー
  3. ウッディーヤナバンダ・ムドラー
  4. ジャーランダラバンダ・ムドラー
  5. ムーラバンダ・ムドラー
  6. マハーバンダ・ムドラー
  7. マハーデーヴァ・ムドラー
  8. ケーチャリー・ムドラー
  9. ヴィパリータ・カラニー・ムドラー
  10. ヨーニ・ムドラー
  11. ヴァジュローリー・ムドラー
  12. シャクティ・チャーラナ・ムドラー
  13. タターカ・ムドラー
  14. マンドゥーカ・ムドラー
  15. シャーンバヴィー・ムドラー
  16. アシュウィニー・ムドラー
  17. パーシニー・ムドラー
  18. カーカ・ムドラー
  19. マータンギーニ・ムドラー
  20. ブジャンガ・ムドラー

この節では各ムドラーについて、やり方と効果が簡潔に説明されています。

1. マハー・ムドラー

1. Maha Mudra: With the left foot pressed tightly against the rectum, extend the right leg out in front. Make sure that the heel is touching the floor and the toes are pointing upwards. Hold the big toe of the right foot with the fingers of the right hand. Keep the chin firmly pressed against the chest and keep the gaze fixed on the midbrow. Similarly, following the instructions mentioned above, repeat the mudra with the right foot pressed firmly against the rectum and the left leg extended forward.

Benefit:Tuberculosis (consumption of lungs), asthma, coughing and breath diseases, obstruction of bowels, diseases of the spleen, indigestion, such diseases of vayu will be removed.

やり方:左足を直腸に向かってしっかりと押し当て、右足を前に伸ばす。かかとが床に接し、つま先が上を向いていることを確認する。右手の指で右足の親指をつかむ。顎を胸にしっかりと押し付け、眉間の中央に視線を固定する。同様に、右足を直腸に向かってしっかりと押し当て、左足を前に伸ばした状態で、逆側も行う。

効果:結核(肺の消耗)、喘息、咳や呼吸器疾患、腸閉塞、脾臓疾患、消化不良など、ヴァータ(風)の疾患の解消。

マハーは「偉大な」などの意味。

「足を」「直腸に向かって」押し当てるという表現で説明されていますが、足の部分としては一般的に「かかと」、当てる場所としては一般的に「肛門」または「会陰」とする場合がありますが、ここではそこまで詳しくは説明されていないようです。

2. ナボー・ムドラー

2. Nabho Mudra: Fold the tongue up to the upper palate with the tip of the tongue touching the root or base of inner tongue. Pull the breath in and hold it inside as long as possible. The yogabhyasi can follow this practice always and anywhere, irrespective of time and place, no matter what activity he is involved in.

Benefit: It will remove weakness of the body and give proper strength to the practitioner.

やり方:舌先を口蓋に向かって折り上げ、舌の根元または舌の付け根に触れさせる。息を吸い込み、できるだけ長く息を止める。ヨーガ実践者は、時間や場所、従事している活動に関わらず、いつでもどこでもこの練習を行うことができる。

効果:体の衰弱を取り除き、実践者に適切な力を与える。

ナボーは「空」「空気」などの意味。

舌を使ったムドラー、たしかにいつでもどこでもできそうですが、やってみると難しい技です。

3. ウッディーヤナバンダ・ムドラー

3. Uddiyanabandha Mudra: Draw in the navel in such a way as to press against the bones of the back (spine) with the abdomen firmly pulled in.

Benefit:Prana vayu will be directed towards the path of the susumna nadi and this will help the practitioner overcome death.

やり方:腹部をしっかりと引き締め、へそを背骨に押し付けるように意識する。

効果:プラーナ・ヴァーユがスシュムナー・ナディへと導かれ、実践者は死を克服する助けを得る。

ウッディーヤナは「飛翔する」などの意味。少し発音の難しい言葉で、日本ではウーディヤナ、ウディヤーナなどと表記される場合もあります。

アシュタンガヨガなどで行われる穏やかな腹部のバンダとは異なる行法です。以下の記事なども参考にしてみてください。

参考:バンダとは|ヨガポーズをキープするコツ・呼吸法の効果の高め方

4. ジャーランダラバンダ・ムドラー

4. Jalandhara Bandha Mudra: Take the chin four angulas below the neck, press it firmly against the chest and maintain this position.

Benefit: Cleans all the nadis and cakras located in the following regions: the four big toes and fingers, the top of the heel, the knees, the thighs, the genitals, the navel, the chest, the neck, the midbrow, the head, and the brahmarandhram. It also awakens the kundalini.

やり方:顎を首から4アングラ(約4.5cm)下に引き寄せ、胸にしっかりと押し付け、この姿勢を維持する。

効果:足の親指と人差し指、かかとの上部、膝、太もも、性器、へそ、胸、首、眉間、頭部、そしてブラフマランドラにあるすべてのナーディー(エネルギー経路)とチャクラ(エネルギー経路)を浄化する。また、クンダリニーを覚醒させる。

ジャーランダラは「水を持つ者」などの意味で、ヒンドゥー教の神の名前でもあります。

このバンダは、現代ヨガでもよく用いられ、プラーナーヤーマと組み合わせて行われることが多いです。

クンダリニー・タントラでは、喉のヴィシュッディチャクラの覚醒法として登場します。

参考:「クンダリニー・タントラ」を読む【46】第3章 9節:ヴィシュッディチャクラの覚醒方法

5. ムーラバンダ・ムドラー

5. Mulabandha Mudra: With the left heel, firmly press the kandasthana which is between the rectum and the genitals and pull the heel in tightly in order to close the anus. Pull in the stomach firmly and press it against the bones in the back (the spine). Bring in the right heel and place it on top of the genitals. This is in hatha yoga.

Benefit:Because of this, we can conquer the prana vayu and bring it under our control.

やり方:左のかかとで、直腸と性器の間にあるカンダスターナをしっかりと押し、かかとを強く引き寄せて肛門を閉じる。お腹をしっかりと引き締め、背骨に押し付ける。右のかかとを引き寄せ、性器の上に置く。これはハタヨーガの行法である。

効果:プラーナ・ヴァーユを征服し、制御下に置くことができる。

ムーラは「根」「基盤」などの意味。

ムーラバンダは、現代ヨガでは一般的に会陰または肛門を締める行法として行われますが、ここで示されているやり方はかかとで押す手順が含まれていて、シッダーサナのやり方に近いように思えます。また、お腹を引き締めるというウッディーヤナバンダの過程も加わっているようです。

シッダーサナ(達人坐)

シッダーサナのクンダリニーヨーガにおけるやり方については、以下の記事なども参考にしてみてください。

参考:「クンダリニー・タントラ」を読む【39】第3章 2節:クンダリニーヨーガの坐法・姿勢

ナディが始まる場所であるカンダスターナの位置は、3.5節ではへその下・性器の上という説明でしたが、ここでは直腸と性器の間という説明になっています。直腸と性器の間というと、会陰の上あたりということになり、男性では前立腺があるあたりということになるかと思います。

ここで説明されているやり方では、カンダスターナをしっかり押して肛門を締めるという説明ですが、左のかかとは会陰にあたっているのか肛門にあたっているのかははっきりしません。

6. マハーバンダ・ムドラー

6. MahabandhaMudra: Firmly press the left heel into the kandasthana. Place the right foot over that and stay in kumbhaka.

Benefit: When you do this, all the nadis in the body turn upward and the ida, the pingala, and the susumna nadis join in the midbrow. This will overcome death and protect the body.

やり方:左のかかとをカンダスターナにしっかりと押し当てる。その上に右足を置き、クンバカ(止息)を保つ。

効果:このムドラーを行うと、体中のすべてのナーディーが上向きになり、イダー、ピンガラ、スシュムナーのナーディーが眉間で合流する。これにより、死を克服し、身体を守ることができる。

カンダスターナの位置は、一つ前のムーラバンダ・ムドラーの説明によれば直腸と性器の間ということになりますが、体表上での位置はやはり会陰なのか肛門なのかははっきりしません。恥骨という可能性もありますが、上に足を重ねているので、おそらくは下の足は会陰か肛門かと思います。

マハーバンダという名前の行法は様々な教典に出てきますが、どれもやり方は微妙に異なっているようでした。

参考:シヴァサンヒター概説【12】4.23-4.110 十種のムドラー

参考:ゲーランダサンヒター概説3.6-3.24 〜ムドラー解説1〜

7. マハーデーヴァ・ムドラー

7. Mahadeva Mudra: Sit in mula bandha mudra and do kumbhaka in uddiyana bandha.

Benefit: This will increase the jathara agni and you will get the animadi guna siddhi — one of the eight siddhis which is the quality of becoming as minute as an atom. This belongs to raja yoga.

やり方:ムーラバンダ・ムドラーで座り、ウッディーヤナ・バンダでクンバカ(止息)を行う。

効果:これによりジャタラ・アグニが増強され、8つのシッディ(霊能)の一つであるアニマディ・グナ・シッディ(原子のように微細になる能力)が得られる。これはラージャ・ヨーガに属する。

先ほど出てきたムーラバンダ・ムドラーとウッディーヤナ・バンダを組み合わせた技法です。

まとめると、左のかかとで直腸と性器の間にあるカンダスターナをしっかりと押し(体表上では会陰または肛門)、かかとを強く引き寄せて肛門を閉じ、右のかかとは性器の上に置き、お腹をしっかりと引き締め、背骨に押し付け、その状態で息を止める、ということになります。

8つのシッディは、以下の通りです。

  • アニマ:体を非常に小さくする
  • マヒマ:体を非常に大きくする
  • ラギマ:とても軽くなる
  • ガリマ:重くなる
  • プラプティ:どこにでも行ける
  • プラカーミヤ:すべての望みを叶える
  • イーシャットヴァ:すべてを創り出す
  • ヴァシットヴァ:全てを支配しコントロールする

参考:ヨーガスートラ解説 3.39-3.50 〜その他もろもろ超能力〜

用語:シッディ siddhi

また、シャットクリヤの節でも出てきたように「これはハタヨーガの行法である」「これはラージャヨーガの行法である」といった説明が、このムドラーの節でもたまに追加されています。追加される位置が、やり方のところだったり効果のところだったりバラバラしていますが。

自分の進むヨーガの道に合わせて、ムドラーも選択せよということなのでしょう。

8. ケーチャリー・ムドラー

8. Khecari Mudra: After first learning the yoga marmas with the help of a satguru who is still practising this, cut 1/12 of one angula measure (width of one hair) of the thin seed of skin at the bottom of the tongue with a sharp knife. Apply a well-powdered paste of sainthava lavanam salt (rock salt) on the area of the cut. Rub cow’s butter on both sides of the tongue, and holding the tip of the tongue with a small iron tong, pull the tongue out carefully, little by little. Repeat this (the pulling) every day. Once a week, as mentioned above, cut the seed of flesh at the base of the tongue very carefully. Practise this for three years. The tongue will lengthen and will easily be able to touch the middle of the eyebrows. After it lengthens this much, fold it inside the mouth, keep it in the cavity which is alongside the base of the inner tongue and fix the gaze on the mid-brow.

Benefit:Hunger and thirst subside without loss of body strength and without allowing room in the body for any disease. If practised daily, the body develops a lustre in a few days and one quickly reaches the state of samadhi and drinks the divine nectar. This belongs to hatha yoga.

やり方:まず、このヨーガの実践を続けているサットグル(真の師)の指導のもとでヨーガのマルマを学んだ後、鋭利なナイフで舌の付け根にある薄い皮の種子を、1アンギュラ(髪の毛1本分の幅)の1/12ほど切り取る。切り口に、よく粉末状にした岩塩を塗る。舌の両側に牛のバターを塗り、小さな鉄製のトングで舌先をつかみ、舌を少しずつ慎重に引き出す。これを毎日繰り返し、週に一度、前述のように、舌の付け根にある肉の種子を非常に慎重に切り取る。これを3年間続ける。舌は長くなり、眉間の真ん中に簡単に触れることができるようになる。その長さになったら、舌を口の中に折り込み、舌の付け根の横にあるくぼみに置き、眉間の真ん中に視線を固定する。

効果:体力の低下や病気の発症を起こさずに、空腹感や喉の渇きが和らぐ。毎日実践すれば、数日で体に輝きが増し、すぐにサマディ(三昧)の状態に達し、神聖な甘露を味わうことができる。これはハタヨーガに属する。

ケーチャリームドラーはハタヨーガの中でも重要な技法ですが、舌の下の筋を少しずつ切っていって舌を長くしていくというやり方がハタヨーガ・プラディーピカーなどでも示されています。

参考:ハタヨーガプラディーピカー概説 3.32-3.54 〜ケーチャリームドラーのやり方と重要性〜

この方法の是非についてはよく議論されるところではありますが、クリシュナマチャリア氏は丁寧にやり方を説明しています。

ちなみにここで急に、マルマというものが出てきました。アーユルヴェーダでも重要な概念として用いられるマルマは、現代ヨガではチャクラなどに比べてマイナーな要素のようではありますが、現代の鍼灸にも通じるものがあり、私は注目して研究しています。

参考:経絡・経穴・ナディ・マルマ・チャクラ研究

9. ヴィパリータ・カラニー・ムドラー

9. Viparita Karani Mudra: Keeping the head on the ground, lift the legs up and hold the entire body straight without bending or curving the body in any direction. This is raja yoga.

Benefit: Activates the surya nadi that is in the navel so that it is present in the upper part, and the chandra nadi which is beneath the tongue so that it occupies the lower part; it overcomes birth and death. Even during the pralaya, the body will remain steady.

やり方:頭を地面につけたまま、両足を上げ、体を曲げたり、どの方向にも傾けたりせず、全身をまっすぐに保つ。これはラージャヨーガに属する。

効果:へそにあるスーリヤ・ナディを活性化して上半身に、舌の下にあるチャンドラ・ナディを活性化して下半身に巡らせる。生と死を超越し、プララヤ(宇宙の終末)の時でさえ、体は安定を保つ。

ヴィパリータ・カラニーという言葉自体は、「逆転の姿勢」といった意味ですが、現代ヨガでは一般的にショルダースタンドの形で行われるアーサナを指すことが多いです。ただ、ここの説明では、ヘッドスタンドのことを指しているようにも思えます。

ヴィパリータカラニー

シルシャーサナ(ヘッドスタンド)

10. ヨーニ・ムドラー

10. Yoni Mudra: Sit in siddhasana. Carefully close the ears with the two thumbs, the eyes with the two index fingers, the nostrils with the two middle fingers, the upper lip with the two ring fingers and the lower lip with the two little fingers. Suck in the prana vayu (outside air) by doing kaka mudra and joining the prana vayu with the apana vayu, practise kumbhaka and maintain this position.

Benefit: All the five great sins are removed and it will quickly bring about a state of samadhi.

やり方:シッダーサナで坐る。両手の親指で耳を、両手の人差し指で目を、両手の中指で鼻孔を、両手の薬指で上唇を、両手の小指で下唇を丁寧に閉じる。カーカ・ムドラーを作り、プラーナ・ヴァーユ(外気)を吸い込み、プラーナ・ヴァーユとアパーナ・ヴァーユを融合させ、クンバカ(止息)を行い、この姿勢を維持する。

効果:五大罪がすべて取り除かれ、速やかにサマーディ(三昧)の状態へと導かれます。

手の指を使って目や鼻や耳などの感覚器官を閉じる、別名シャンムキー・ムドラーなどとも呼ばれる行法です。

カーカ・ムドラーは、後に登場します。一般的には口をすぼめて息を吸い込むする技法ですが、Google画像検索で調べてみると舌をすぼめて丸くするシータリープラーナーヤーマのようなやり方をしている人々もいるようです。

プラーナ・ヴァーユとアパーナ・ヴァーユを融合させるという表現もハタヨーガの瞑想法の中でよく出てきますが、口から吸い込んだ気(プラーナ)と会陰または肛門から吸い上げた気(アパーナ)を、丹田のあたりで融合させるイメージを用いることが多いです。

五大罪は、ヒンドゥー教のマヌ法典に記されていて、以下の通りです。

  • バラモン(聖職者)を殺害すること
  • スラー酒(穀物酒)を飲むこと
  • 黄金の窃盗
  • グル(師・父)の妻との密通
  • 上記の4つの大罪を犯した者と交流すること

11. ヴァジュローリー・ムドラー

(a) Vajroli Mudra: Form 1: Using both hands, raise the body placing the entire body weight on the hands without allowing the head to touch the ground. Keeping the head this way, hold the body as in viparita karani mudra and do kumbhaka. This is raja yoga.

(b) Vajroli Mudra: Form 2: Take a 12 angula long thin glass pipette or lead pipe and through the genital opening insert it and remove it daily, increasing the amount of insertion by one angula each day. After you are able to practise inserting the pipe for a length of twelve angulas, draw in the outside air through such an opening in the genitals. After practising this, eventually draw in milk and then water and then push them out of the body. This is hatha yoga.

Benefit: This is for people with excessive sexual activity, and who through heat have lost viryam (sexual potency). It is for diabetic diseases and for those with seminal and vaginal discharges. This will correct the viryam and give good body strength. As long as the viryam is not lost, disease, old age and death will be held away.

(a) やり方1:両手を使って体を持ち上げ、頭が地面に触れないようにしながら、全身の体重を両手にかける。頭をこの状態に保ち、ヴィパリータ・カラニー・ムドラーのように体を支え、クンバカを行う。これはラージャヨーガに属する。

(b) やり方2:長さ12アンギュラの細いガラス製ピペットまたは鉛製のパイプを用意し、性器の開口部から挿入し、毎日1アンギュラずつ挿入距離を伸ばしながら抜き取る。12アンギュラまで挿入できるようになったら、性器の開口部から外気を吸い込む。これを練習した後、最終的には牛乳、そして水を吸い込み、体外に排出する。これはハタヨーガに属する。

効果:性行為が過剰で、熱によってヴィリヤム(性欲)が低下した人に効果的である。これは糖尿病患者や、精液や膣からの分泌物が多い人に効果がある。精液のバランスを整え、体力を回復させる。精液が失われない限り、病気、老い、そして死を遠ざけることができる。

(a)の方は、文字だけではわかりにくいですが、ここで言われているヴィパリータ・カラニー・ムドラーはヘッドスタンドのような形であるとすれば、ここで示されているのは頭を地面につけずに両手で全体重を支えるということから、ハンドスタンドのことを言っているかもしれません。ただ、これがラージャヨーガなのか?というのはちょっと判断が難しいところです。

(b)は、いかにも密教的な性的ヨーガの男性向けの行法です。沖正弘氏の本などを見ると、氏はこういう行法を練習している人に出会っているようで、現代でも実際に存在しているようです。

ヴァジローリー・ムドラーは、同じ名前でも色々な異なる行法があり、ハタヨーガ・プラディーピカーやシヴァサンヒターでは同様な性的ヨーガの行法が示されていました。

参考:ハタヨーガプラディーピカー概説 3.83-3.102 性的ヨーガのムドラー

参考:シヴァサンヒター概説【12】4.23-4.110 十種のムドラー

クンダリニー・タントラでは、スワディシュターナチャクラの覚醒法として、同じ名前で全く別の行法が用いられています。こちらは骨盤底筋のトレーニングで、いわゆるケーゲル体操のようなものです。ただ、いずれのヴァジローリーも、性的な機能に関係することは共通しているようです。

参考:「クンダリニー・タントラ」を読む【49】第3章 12節:チャクラ覚醒の行法一覧と進め方

12. シャクティ・チャーラナ・ムドラー

12. Sakti Calana Mudra: Sit in padmasana and keep the nostrils firmly closed. Hold the prana vayu in the stomach, do kumbhaka, and through uddiyana bandha mudra compress the prana vayu. The 72000 nadis will move to the muladhara cakra in the kandasthana and awaken the sleeping kundalini which, without moving elsewhere in the body, will occupy the middle of the path of the susumna. Such a kumbhaka is called sakti calana mudra.

Benefit: It will quickly facilitate control of the prana and lead to samadhi siddhi.

やり方:蓮華座で座り、両鼻孔をしっかりと閉じる。プラーナ・ヴァーユを腹部に保持し、クンバカを行い、ウッディーヤナ・バンダ・ムドラーでプラーナ・ヴァーユを圧縮する。72,000本のナディがカンダスターナ内のムーラーダーラ・チャクラに移動し、眠っているクンダリニーを覚醒させる。クンダリニーは体内の他の場所に移動することなく、スシュムナーの経路の中央に位置する。

効果:プラーナの制御を速やかに容易にし、サマーディ・シッディへと導く。

クンダリニー覚醒のための重要な行法とされることの多いシャクティ・チャーラナ・ムドラーですが、これも同じ名前で異なるやり方のムドラーがいくつも存在します。どのやり方も、クンダリニーが眠るムーラーダーラチャクラに関連していることは、共通しているようです。

ただ、ハタヨーガ・クンダリニーヨーガでは、シッダーサナで坐ってかかとを会陰に押し当てる形がよく用いられますが、ここではパドマーサナ(蓮華座)と明記されていて、少し意外な感じがします。ここで紹介されているシャクティ・チャーラナ・ムドラーは会陰や肛門を刺激するのではなく、腹部でプラーナを圧縮するという方法が行われています。そのため、シッダーサナである必要はないのでしょう。

蓮華座は、瞑想に適している坐法ではありますが、かかとはムーラーダーラチャクラに直結する会陰には接していないため、ハタヨーガ的なチャクラ覚醒の行法では、シッダーサナに次ぐ2番目に重要な坐法として扱われることが多いです。

パドマーサナ(蓮華座)

13. タターカ・ムドラー

13. Tataka Mudra: Sit in pascimottanasana and push the stomach forward. This is raja yoga.

やり方:パスチモッターナーサナの姿勢で座り、お腹を前に突き出す。これはラージャヨガに属する。

タターカは「池」「沼」などを意味する言葉ですが、このムドラーは効果も説明されておらず、だいぶ謎ですね。そしてこれはラージャヨーガなんでしょうか。

ちなみにパスチモッターナーサナは現代ヨガでもおなじみの前屈ポーズで、第4章ではいろいろなバリエーションが登場します。

パスチモッターナーサナ

現代ヨガでタターカ(タダーカ)ムドラーと呼ばれるものは、仰向けの姿勢でお腹を引き締めて、まるで姿勢良く立っているような形でキープをするやり方が一般的で、アシュタンガヨガサルヴァンガーサナに入る前などに行われます。平らに保ったお腹を、池のように見立てています。

14. マンドゥーカ・ムドラー

14. Manduka Mudra: Keep the mouth closed and fold the tip of the tongue up to the top palate and after this keep moving it this way and that. Catch the nectar dripping from the upper part of the root of the tongue and swallow it. This is hatha yoga.

Benefit:This will not allow any disease to approach. It will prevent aging, will not allow greying of hair, and will protect the body.

やり方:口を閉じ、舌先を口蓋に向かって折り上げ、その後、あちこちに動かす。舌根の上部から滴り落ちる甘露を受け止め、飲み込む。これはハタヨーガに属する。

効果:あらゆる病気を寄せ付けなくなる。老化を防ぎ、白髪を防ぎ、体を守る。

マンドゥーカは 「カエル」の意味で、ヨガマットのメーカーでも有名ですね。フレアプラスでもずっと使っています。角にカエルマークがついています。

舌で口蓋を刺激することで唾液をたくさん出し、飲み込むという技法ですが、これは仙道の行法にも見られるものです。唾液には若返り効果のある成分が含まれていると言われています。

参考:現代仙道百科―心身改革の秘法体系/小野田大蔵(著)|書籍紹介

15. シャーンバヴィー・ムドラー

15. Sambhavi Mudra: Due to the strength of the traataka abhyasa mentioned in the shatkriyas, after the eyes have teared profusely, fix the gaze on the mid-brow.

Benefit: This gives rise to ekagrata citta and gives dhyana siddhi. This is raja yoga.

やり方:シャットクリヤで述べたトラターカ・アビヤーサの効果により、涙が大量に流れ出た後、眉間の中央に視線を固定する。

効果:これにより、エーカーグラタ・チッタ(一点集中の心)が生まれ、ディヤーナ・シッディ(瞑想の成就)が得られる。これはラージャヨーガに属する。

トラータカは、ロウソクなどをじっと見つめて、まばたきをせずに、涙が出てきてもなるべく長時間保っておくという、眼を浄化する行法として、シャットクリヤの節で紹介されていました。

眉間の中央はアージュニャーチャクラに関係しており、シャーンバヴィー・ムドラーはチャクラ覚醒のための重要な行法として用いられます。

参考:「クンダリニー・タントラ」を読む【41】第3章 4節:アージュニャーチャクラの覚醒方法

エーカーグラタは「一意専心」「一点集中」などの意味で、ヨーガスートラにも出てくる言葉です。

参考:ヨーガスートラ解説 3.9-3.16 〜「変化」に気づく〜

「ラージャヨーガに属する」という分類がどこまで意味があるのかわかりませんが、シャーンバヴィー・ムドラーはハタヨーガ・クンダリニーヨーガの中でも重要な行法として扱われています。

こういった視線を使った行法は、現代でもうまく活用していくと、心の制御などにもとても有効です。

16. アシュウィニー・ムドラー

16. Aswini Mudra: Repeatedly close and open the anal opening many times.

Benefit: Cures diseases of the rectum, will render physical strength and sharpness of the intellect, awakens the power of kundalini and conquers untimely death. This is raja yoga.

やり方:肛門の開口部を繰り返し開閉する。

効果:直腸疾患を治癒し、身体の強さと知性の鋭敏さを高め、クンダリーニの力を覚醒させ、不慮の死を克服する。これはラージャヨーガに属する。

肛門を締めたり緩めたりする、というざっくりしたやり方で説明されていますが、これも重要な行法です。

クンダリニー・タントラでは、スワディシュターナチャクラの覚醒法として説明されています。

参考:「クンダリニー・タントラ」を読む【43】第3章 6節:スワディシュターナチャクラの覚醒方法

これもラージャヨーガ?

17. パーシニー・ムドラー

17. Pasini Mudra: Take the two legs and place them behind the neck. Extend the arms, and with the support of the outstretched hands placed on the ground, raise the body.

Benefit: Kundalini being kindled nourishes the body. This is hatha yoga.

やり方:両足を首の後ろに置きます。両腕を伸ばし、地面に置いた両手で体を支えながら、体を持ち上げます。

効果:クンダリーニが活性化され、体が養われる。これはハタヨーガに属する。

パーシーは「縄」などの意味、パーシニーは「縄または罠を持つ女性」の意味で女神カーリーの異名の一つとされます。

やり方をそのまま読み取るとしたら、現代ヨガではドウィパーダシールシャーサナBと呼ばれているアーサナの形かと思います。急に難しいムドラーが出てきましたね。

18. カーカ・ムドラー

18. Kaka Mudra: Hold the mouth like a crow’s beak and inhale and pull in the outside air into the stomach.

Benefit: All diseases will be eliminated and you will have a long life like a crow. This is hatha yoga.

やり方:カラスのくちばしのように口をすぼめ、息を吸い込み、外の空気をお腹まで吸い込む。

効果:あらゆる病気が治り、カラスのように長生きできる。これはハタヨーガに属する。

カーカ(カカ)は「カラス」の意味。現代ヨガのポーズとしてはカカーサナなどでおなじみですね。

口をすぼめてストローにようにして、胃の方に空気を送り込むという行法ですが、なかなか難しいです。

本山博氏の密教ヨーガの中でも、古風なイラストとともに紹介されていました。本山氏のカタカナ表記は独特で、カキ・ムドラとなっていましたが。

参考:密教ヨーガ―タントラヨーガの本質と秘法/本山博(著)|書籍紹介

19. マータンギーニ・ムドラー

19. Mathangini Mudra: Stand in water up to the neck. Through the nostrils, draw in water and spit it out through the mouth. Then take in water through the mouth and expel it out through the nose. This is raja yoga.

Benefit:Practise this every day many times in the same place as described above. You will become strong like an elephant, you will not get any diseases and will conquer untimely death.

やり方:首まで水に浸かり、鼻から水を吸い込み、口から吐き出す。次に、口から水を吸い込み、鼻から吐き出す。これはラージャヨーガに属する。

効果:上記の方法で、毎日何度もこの練習を行うべし。象のように強くなり、病気にかからず、不慮の死を克服できる。

マータンギはヒンドゥー教の女神の名前で、知恵、芸術、言葉などを司ります。

あまり見たことのない行法ですが、これもラージャヨーガ…?

マータンギ・ムドラーの名前で調べると、手印のほうがよく見つかるようです。

20. ブジャンガ・ムドラー

20. Bhujangini Mudra: Stay in bhujangasana, stretch the neck out in front and according to vata sara krama, pull in the outside air and do puraka kumbhaka.

Benefit: This will remove diseases like indigestion, agni mandam (low agni), stop stomach pain and leave you happy. This is raja yoga.

やり方:ブジャンガーサナの姿勢を保ち、首を前に伸ばし、ヴァータ・サーラ・クラマに従って外気を吸い込み、プーラカ・クンバカ(息を吸って止めること)を行う。

効果:消化不良、アグニ・マンダム(消化力低下)などの症状を改善し、胃痛を止め、幸福感をもたらす。これはラージャヨーガに属する。

ブジャンガーサナは、現代ヨガでもおなじみのコブラのポーズです。ゲーランダ・サンヒターにも登場するので、じつは結構歴史のあるアーサナです。

ブジャンガーサナ(コブラのポーズ)

参考:ゲーランダサンヒター概説2.7-2.44 〜ハタヨーガプラディーピカーのアーサナとの比較〜

ヴァータ・サーラはシャットクリヤのダウティの中に含まれていた行法ですが、ここではブジャンガーサナを行いながらカーカ・ムドラーのように口をすぼめて胃に空気を飲み込んで、プーラカ・クンバカする(吸って止める)、といったやり方かと思います。難しい行法ですが、たしかに消化器系に効きそうではあります。

これも、ラージャヨーガ??

まとめ

節の最後に、ムドラーの実践と効果についてのまとめがあります。

If one practises these twenty mudras according to one’s strength and capability, then diseases associated with svasam (respiration), kasam (coughing), spleen, meham(bladder) — such 84,000 diseases can be prevented. One develops extraordinary physical strength and will not fall victim to an untimely death. Moreover, the prana vayu will join the susumna nadi and one develops one-pointedness of the gaze and of the mind.

これらの20種類のムドラーを、それぞれの体力と能力に合わせて実践すれば、以下のような効果があると説明されています。

  • 呼吸器系、咳、脾臓、膀胱など、84,000種類もの疾患を予防できる。
  • 並外れた身体能力が身につく。
  • 不慮の死に見舞われることがなくなる。
  • プラーナ・ヴァーユがスシュムナー・ナディと合流し、視線と精神の集中力が高まる。

84,000種類、アーサナの数との関連がありそうな数字です。

不慮の死に見舞われることがなくなる、という効果はアシュウィニー・ムドラーやマータンギーニ・ムドラーの説明に含まれていました。ムドラーを実践すると、運命をもコントロールできるようになるということでしょう。

また、「視線」の集中という言葉が入っているように、目の使い方は心のコントロールのために重要で、私もよくレッスンでこのあたりの話をします。

Therefore, these mudras have to be achieved before practising pranayama.

これがこの節の最後の一文ですが、「したがって、プラーナーヤーマを実践する前に、これらのムドラーを習得する必要がある。」と述べられています。

ムドラーはハタヨーガでは奥義のように扱われていて、アーサナ・プラーナーヤーマ・バンダを組み合わせて行われるため、教典の中では比較的後半に説明されることが多いですが、実際のところこれらの行法の分別と順番などは、曖昧な印象があります。

クリシュナマチャリア氏は、プラーナーヤーマの実践の前にムドラーを習得するべしと言っているため、プラーナーヤーマが奥義というように位置づけているようです。

ヨーガで最終的に目指す、心の波立ちがなくなった状態では、「自然に」息が止まるケーヴァラ・クンバカに至ります。そのためにいろいろな「意図的に」息を止めるクンバカ(プラーナーヤーマ)の実践を行い、心の作用を止めていくことを目指します。

クリシュナマチャリア氏の意図としてはおそらく、そのクンバカの実践の前に、心を波立たせる原因ともなる身体の病気や痛みなどをなくしておく必要があり、そのためにシャットクリヤやムドラーを実践しておくべし、ということかと思います。

これで第3章が終わり、第4章はいよいよ、現代ヨガでもおなじみのヨガポーズも多く含まれているアーサナの話に入ります。

次記事:(執筆中)

前記事:ヨーガマカランダ概説【14】3.7節 10種類のヴァーユ(気の流れ・分布)

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