背中で合掌する動きができない方へ、動きの解説やコツと、関連する筋肉のセルフマッサージ方法を書いておきます。
背中で合掌する動きの解説・やり方・動画
まず、体側にだらんと腕を垂らした状態になります。
そこから、上腕骨を内回し(内旋)して、手のひらが外を向く状態にします(外旋でも手のひらは外を向きますが、外旋ではないので気をつけてください)。
腕を少し斜め後ろへ伸ばします。ここで思い切り後ろ方向へ腕を運ぶように勘違いしがちですが、後ろ方向へは「少し」で大丈夫です。ここまでの動作は、水泳のバタフライで水をかくような動きと同じです。
肘を曲げて、前腕を内旋(回内)して背中にぴったりつけます。手の小指側が背中についている状態になります。もし手の甲がついている場合は、前腕の内旋が足りていません。
さらに肘を曲げて、肩甲骨の内側に手の甲が沿うような形にします。
これを両側で行うことで、合掌できます。
背中で合掌できない原因の例
背中で合掌するためのポイントを3つ挙げるとしたら、骨ごとに考えて、下記のようになります。
- 肩関節の位置を正しくする
- 上腕を内旋する
- 前腕を内旋(回内)する
それぞれについて、間違っている場合の例と、関連する筋肉を紹介します。固まっている・うまく使えていない筋肉が見つかったら、後に紹介するセルフマッサージなどをやってみてください。
各筋肉については、機能解剖学事典も参考にしてみてください。個別解説のある筋肉については下記筋肉名からもリンクしています。
×肩が前にでている(巻き肩)
肩関節が前に出すぎていると、それだけ完成形の手の位置からは遠ざかることになります。とはいえ、肩を後ろに引きすぎてもいけません。
正しい肩の位置は、普通に姿勢良く立っている状態での肩の位置より少しだけ後ろ、というイメージです。
×上腕が内旋できていない
肩の位置は正しくても、肘が後ろに飛び出している場合があります。これは上腕骨が内旋できていない状態です。
肘が遠いほど、合掌へ向かうための距離が遠ざかってしまいます。肘が脇にぴったりついている状態になるようにしていきましょう。
×前腕が内旋(回内)できていない
上腕が内旋して肘が脇にぴったりついても、そこから先にすすめない人も多いようです。もし手の甲が背中に向いているようであれば、前腕の内旋が足りていない状態です。
合掌の完成形を思い出してみると、手の小指側が背中に向いているはずであり、手の甲ではないのです。
- 前腕を回内する筋肉(主働筋):円回内筋、方形回内筋
- 前腕を回外する筋肉(拮抗筋):回外筋、上腕二頭筋
細かい点になりますが、ここで気をつけたいのが、回内を妨げる筋肉として上腕二頭筋があることです。上腕二頭筋は、肘を曲げる筋肉であり、合掌する時には肘をかなり曲げる必要がありますが、この筋肉が力みすぎていると、前腕の回内を妨げてしまいます。そのため、肘を曲げる動作においては、それを妨げる上腕三頭筋はリラックスしている必要があります。上腕三頭筋まで緊張していると、肘を曲げるときに上腕二頭筋が緊張してしまい、回内の動作が十分にできなくなります。
関節をまたぐ話になってくると、このように複雑に関係する筋肉がでてきます。難しい話になりましたが、簡単に言えば、必要な筋肉だけを最小限の出力で用い、できるだけ全体的にリラックスしておくということです。
ちなみにゴームカーサナのように背中で手をつなぐ場合は、手の甲が背中につく形になるので、逆に回外の動きが必要になります。
関連する筋肉のセルフマッサージ
上記で扱った筋肉の中で、主なものに関するマッサージ方法を紹介します。
まず肩関節にふれてみる
肩関節というのは、身体の中でもかなり自由度の高い関節です。にもかかわらず、日常的にはほとんど動かしていない人も多いかと思います。
まず、肩関節に触ってみて、どんな構造になっているのかを把握してみましょう。
肩関節は、球状関節になっているので、ほとんどどんな方向にでも動かすことができます。本来の可動域を思い出しながら、関係する筋肉に意識を通していきます。
前鋸筋マッサージ
前鋸筋は主に肩甲骨を離すための筋肉で、脇の下に広がっています。拳をつかって、肋骨に沿うように少し斜めにこすってマッサージします。固まっている人は、結構な痛みがあるかもしれません。気持ち良い範囲で行ってください。
大胸筋マッサージ
大胸筋は胸の一番表側にあるのでわかりやすいです。広範囲に広がっているので、胸の真ん中あたりであれば指で軽く圧してマッサージしたり、脇に近い位置であれば写真のように軽くつかんで左右に揺らすような形でゆるめます。
小胸筋マッサージ
小胸筋は少しわかりにくい場所にありますが、胸式呼吸にも関係する重要な筋肉です。
胸の一番表側にある大胸筋の裏側、脇の下近くにあります。大胸筋の裏側に4本指をいれて、胸式呼吸をしてみると動く筋肉があります。少し圧をくわえながら、深く胸式呼吸するだけでもマッサージになります。
肩甲下筋マッサージ
肩甲下筋は、肩甲骨の裏(肋骨側)についています。そんなところが触れるの?と思ってしまいますが、よくある「肩甲骨はがし」はここに手をつっこんで行っていることが多いようです。
コツとしては、背中を大きく丸めるようにして肩関節をかなり前に出した(肩甲骨を外転)状態で、脇の下に手を入れます。
肩甲骨を外転させるためには、前述の前鋸筋が働いた状態で、僧帽筋中部・菱形筋群などが伸びている必要があります。
僧帽筋・菱形筋マッサージ
肩甲骨を離す(外転)ことができない場合は、僧帽筋・菱形筋もマッサージしましょう。
僧帽筋は、いわゆる肩コリの原因になりやすい筋肉です。首から肩先までかなり広範囲に広がっていて、各部分で別の働きをもっています。今回は、肩甲骨に関わる部分として僧帽筋中部(肩甲骨あたりの高さにある部分)をマッサージしておきましょう。
菱形筋の場所はわかりやすくて、肩甲骨の間です。ただし、少しインナーにあるので、圧を調整する必要があります。指では難しい場合は、テニスボールを床に置いて、その上に肩甲骨の内側(背骨の脇)をあてるようにして寝転がり、重力を使ってマッサージします。あまり強く押すと、表面近くにある筋肉などを痛めてしまうので、適度に調整しましょう。
参考:僧帽筋の起始停止・関連ヨガポーズ
参考:大菱形筋の起始停止・関連ヨガポーズ
参考:小菱形筋の起始停止・関連ヨガポーズ
棘下筋・小円筋マッサージ
棘下筋・小円筋は、上腕骨を外旋する筋肉であり、内旋するのを妨げる筋肉です。肩甲骨の表面、下側についています。
これも手で押すのが難しい場合は、テニスボールなどを使っても良いでしょう。
参考:棘下筋の起始停止・関連ヨガポーズ
参考:小円筋の起始停止・関連ヨガポーズ
前腕マッサージ
回内筋などがある前腕には、2本の骨が通っています。その骨と骨の間をほぐすようにマッサージしていきます。写真の位置だけでなく、少しずつ位置を変えながら手首のあたりまで行っていきます。圧をかけながら、前腕をくるくるねじってみても良いでしょう。
パソコンやスマホ作業のせいで、ここはとても固まっている人が多く、押してみると激痛が走ることがあります。適度にほぐしましょう。お風呂で温めながらやるのも良いと思います。
自分の状態を把握しながら、少しずつ深める
背中で合掌する動作は、身体の後ろ側で行うことなので、一体なぜできないのかよくわからないということも多いかと思います。
冷静に自分の状態を把握して、どの筋肉に課題があるのかを見極めてから、少しずつ深めていくようにしましょう。
合掌が行えるようになると、アシュタンガヨガなどでも出てくる後ろに手を回す動きがやりやすくなっていきます。こちらも改めてやり方を紹介します。