オンライン個人レッスン コラム・レッスンを探す

自分を探究する旅の道標 入会不要の教室 [フレアプラス]

ヨーガマカランダ概説【2】1.1 なぜヨーガを修習するのか

ヨーガマカランダ概説【2】1.1 なぜヨーガを修習するのか

現代ヨガの父は、どんなヨガを教えていたのか

「現代ヨガの父」ことクリシュナマチャリア氏の主著である「ヨガマカランダ(ヨーガ・マカランダ)Yoga Makaranda」を読み進めていきます。

参考:ヨガマカランダ(ヨーガ・マカランダ)の概要

引用部分は、特に記載のない限り以下の英語版(2006年)Yoga Makarandaを出典とします。

Yoga Makaranda(無料PDF 3.9MB)

この記事の目次

ヨーガの修習

このヨーガマカランダの英訳本では、全てが英語に訳されているわけではなく、原語のニュアンスを活かすためにサンスクリット語のままになっている言葉が随所に出てきます。

第一章の冒頭から、Yogabhyasa(ヨーガービヤーサ)という言葉が用いられていますが、これは「ヨーガ」と「アビヤーサ」が合わさった言葉です。

アビヤーサは「修習」「常修」などの意味で、ヨーガスートラなどでも出てくる言葉です。

ヨーガービヤーサは、ヨーガを日々絶え間なく実践することを意味しています。

現代でもヨガを練習している人は、レッスンの1時間のあいだなどだけではなく、できるだけ日々の生活も絶え間なくヨガ的な振る舞いをしていくことで、より心身が研ぎ澄まされていくことでしょう。

用語:アビヤーサ abhyāsa

ヨーガスートラでは、波立つ心をうまく制御して成就に至るには、「ヴァイラーギャ(離欲)」と「アビヤーサ(常修)」が必要であると説いています。

参考:ヨーガスートラ解説 1.12-1.14 〜心を制御する2つの方法〜

ヨーガにも様々な道があり、クリシュナマチャリア氏はどのようなヨーガを教えていたのかということが、これから書かれていきます。

ヨーガに関する一般的な人々の質問への答え

ヨーガマカランダの冒頭部分は、「以下のような疑問に答えるべく、私はこの本を書いた。」という体裁で始まっています。

Why should yoga abhyasa be done? What does one gain as a result of practising
yoga? What should the duration of the practice be (how much time should be
spent on the practice)? What are the reasons for and effects of the practice?
People keep asking me these questions.

(以下、和訳)

  • なぜヨガを修習するべきなのですか?
  • ヨガの実践によって、何が得られますか?
  • どのくらいの時間を、ヨガの実践に費やせばいいですか?
  • 実践を行う理由と効果は?

ここで書かれている質問は、現代でもヨガを始めようとしている人たちや始めたばかりの人たちから、よく聞かれることですね。

クリシュナマチャリア氏もたくさんの人々から同じような質問をされたのでしょう。

これらの質問に答える前に、彼は当時の「現代人」について、以下のように語っています。

Nowadays, the attitudes of people in our society are changing. They look at all their affairs as business ventures and think only in terms of making a profit or loss.

物質主義的な、損得で動く人々が増えていると嘆いています。

そしてそういう人々は、「ヨガを何時間やったら、どういう報酬・効果が得られるのか?」という発想になってしまうため、それはちょっと違うぞというように語っています。

One cannot have such a trivial attitude as expecting immediate benefits in auspicious matters like yogabhyasa, worship, sandhya vandanam (salutation to the sun) or chanting of mantras as though one were a labourer who does one hour of work and expects immediate payment.

ヨーガの修習・祈り・太陽への礼拝・マントラを唱えることなどの縁起の良い行いは、労働者が1時間の報酬をすぐに受け取りたがるような、つまらない態度で臨むべきではないといいます。

これが、先程のよくある質問に対するクリシュナマチャリア氏のヒントということなのでしょう。

私もよく、そんな記事を書いていましたね。

参考:「◯◯を毎日◯回続ければ、◯ヶ月で◯◯に!」という幻想

そして、よく考えれば「人が見返りを求めずに毎日行っていること」があるではないか、という例として、睡眠についての話が始まります。

「心の働きを止める」睡眠とヨーガの比較

When all movements of the mind reduce, when thoughts such as “I”, “mine”, “my greatness”, cease, and when all the affairs of the mind stop, only then is proper sleep possible. Only such a sleep gives a sense of well-being to the body and mind.

全ての心の働きが止まり、「私」「私の物」「私の偉大さ」などといった考えが止んだときだけ、正しい睡眠が起こり、その睡眠こそが私たちの心身に幸福感を与えてくれるといいます。

「心の働きを止める」といった話は、ヨーガスートラのラージャヨーガに通じるものを感じます。ヨーガスートラでは冒頭1.2節から、「ヨーガとは、心の働きを止滅することである(心の波立ちを止めることである)」と示されています。

参考:ヨーガスートラ解説 1.1-1.2 〜ヨーガとは〜

The philosophy of yoga is to withdraw the mind from external activities, to draw its focus inwards, and to bring it into deep concentration.

クリシュナマチャリア氏が言うところによるとヨーガの哲学は、心を外界の現象から離して内側へ向け、深い集中へ導いていくことであるといいます。

先ほどの、心の働きを止めて正しい睡眠に入ることと比較して、睡眠とヨーガの違いは以下のように説明されています。

The resolution of mind acquired from sleep is of a tamasic nature. But the quality of mind (concentration, strength) acquired from yoga sadhana is of a pure sattva guna.

(中略)

It goes without saying that the mental strength acquired through a base of sattva guna is superior to that acquired through a base of tamasic nature.

睡眠によって得られる心の状態はタマス的(鈍性)であり、ヨーガによって得られる状態はサットヴァ的(純性)な状態であり、サットヴァの状態のほうが言うまでもなく優れているといいます。

サットヴァとタマスについては、以下の用語辞典も参考にしてください。

用語:タマス tamas

用語:サットヴァ(サットワ) sattva

Ordinary people will not understand this. The mental concentration and strength acquired through yogabhyasa is called yoga nidra and ordinary mental resting which is tamasic in nature and is acquired as a result of physical exhaustion is called ordinary nidra.

  • ヨーガービヤーサによって至った、心の集中と強さが得られた状態を、ヨガニドラーと呼ぶ。
  • 肉体的な疲労の結果として得られる、本質的にタマス的な睡眠で至った休息状態を、通常のニドラーと呼ぶ。

ここで、「ヨガニドラー」という言葉が出てきます。現代ヨガでも使われる名称ですが、ニドラーは「眠り」などの意味の言葉です。

用語:ニドラー(ニードラ) nidrā

現代ヨガのヨガニドラーは、仰向けの脱力した状態で身体の各部分に意識を向ける、ボディスキャン的な行法の名前として用いられることが多いようです。ボディスキャンは、マインドフルネス業界でもよく用いられます。

クリシュナマチャリア氏はここで、現代ヨガとは少し異なる定義でヨガニドラーという言葉を使い、通常の睡眠としてのニドラーと区別しています。

ヨーガの効果を得るには、どのように実践するべきか

Until it develops this steadiness, we do not obtain any benefits from it. Until the mind is made to remain steady, all the time spent on this pursuit will be wasted and we will not receive any benefits from actions performed by a shaky mind.

冒頭の「すぐに結果を求める人々」の質問に対するヒントが、改めてここで示されています。

心が安定した状態に至り、その状態が維持できなくては、それまでに費やした修行の時間は全て無駄になってしまい、心が揺れ動いているうちは、恩恵は全く得ることができないと説明されています。

これは、ヨガを始めたばかりの多くの人が経験することかもしれません。ヨガの先生は「効果を期待しないで、今に集中してヨガをしましょう」などと言うけれど、どのくらいの期間・どのくらいの頻度でやったら効果が出るの?と思ってしまうのは、当然のことかと思います。

ヨーガスートラでは、絶え間なく・長い間、実践せよと説いています。これこそがアビヤーサ(常修)であり、結果を求めずに今やるべきことをやり続けるべし、ということです。

ゴールの状態は、ヨーガスートラの冒頭でも端的に示されているわけですが、心が完全に安定した状態ということになります。本当の幸福な状態とは、そこに至らなくては得られないということになるでしょう。

恩恵が得られるまでは長い道があるかもしれませんが、クリシュナマチャリア氏は、例えば農業や教育などもそうだね、と例を挙げて説明しています。

For example, let us take the fields of education and agriculture. Just as one reaps the benefits in these fields only after a period of time, so it is in the case of yogabhyasa practised with krama (following the regular order).

時間はかかるかもしれないが、正しいやり方で実践し続けていれば、実りが得られるのであると。

ここで「正しいやり方(順序)」といった意味の言葉として「krama クラマ」というサンスクリット語の言葉が用いられています。彼がパタビジョイス氏に伝えたアシュタンガヨガ(ヴィンヤサヨガ)は、呼吸と動作が決められており、その順序のことを「ヴィンヤサ・クラマ」と呼びます。

In any endeavour, there should be a totally dedicated effort until the completion of the action in order to achieve the benefits of the action. Likewise, there is no doubt that until yogabhyasa is done with the same attitude, practised every day at the same prescribed time and place, one will not obtain the expected benefits of the action.

いくつかの例え話を交えて説明されてきましたが、いかなる努力も、結果が得られるまでは、完全に献身的な態度で継続する必要があり、ヨーガの修習も同じ態度で毎日決められた時間と場所で続けなくてはならない、とまとめられています。

これだけ聞くと、効果も感じられないのに長い間続けなくてはいけないのか?となかなか厳しい道のように思えますが、ゴールに至るまでのステップとして、ヨーガには8支則があり、その各要素の実践によってそれぞれ大きな恩恵が受けられると説明されていきます。

ヨーガの8支則(アシュターンガ)

Just as in order to climb the Tirupati hill one has to climb step by step and only at the end does one achieve darsanam of the swami and experience happiness, similarly everyone who follows the path of yoga sastra has to climb the eight steps of yama, niyama, asana, pranayama, pratyahara, dharana, dhyana, and samadhi proceeding according to the given order.

ヨーガ哲学を学んでいる人々にはおなじみの8支則が挙げられています。

  1. ヤマ(禁戒・個人的規範)
  2. ニヤマ(勧戒・社会的規範)
  3. アーサナ(姿勢・ポーズ)
  4. プラーナーヤーマ(呼吸法・気の制御)
  5. プラティヤーハーラ(感覚制御)
  6. ダーラナー(集中)
  7. ディヤーナ(瞑想)
  8. サマーディ(三昧)

参考:ヨガの目的・基礎知識〜自分なりに、8支則をライフスタイルへ取り入れる〜

ティルパティの丘に登るが如く、一歩一歩順番に進んでいくべきであると語られています。ティルパティは、ヒンドゥー教では主要な巡礼地のようで、検索してみると、◯◯回登ったぞ!と誇っている人もいるようです。お遍路さんと同じようなものを感じますね。

There are benefits at every stage of the practice. From practising only asana, one gains strength of the body; from the practice of only the yama, one develops compassion towards all living beings; from practising only pranayama, it is possible to achieve long life and good health.

最後まで行かないと恩恵が得られないような他の行法とは異なり、ヨーガはその8ステップにおいてそれぞれ大きな恩恵が受けられるといいます。

たとえば、アーサナ(姿勢・ポーズ)を実践すると強い身体が得られ、ヤマを実践すると全ての生物への慈愛が育まれ、プラーナーヤーマを実践すると長寿と健康が得られる、と説明されています。

ヨーガスートラの時代では、アーサナは主に「坐法」を表す言葉で、心の安定を導くといった効果が示されていましたが、ここでは強い身体を作るということが強調されているため、クリシュナマチャリア氏の用いるアーサナという言葉は、ハタヨーガ以降の身体をしっかり動かす行法のことを表していると思われます。

参考:ハタヨーガ・プラディピカーの概要、アーサナ一覧

この節の終盤では、8支則のうち最初の4つ、ヤマ・ニヤマ・アーサナ・プラーナーヤーマについてさらに少し語られています。

ヤマ・ニヤマの効果

Is there anybody who does not wish to be in a state of peace and societal fortitude. These two issues are essential for families to live in a state of contentment. Nowadays (in the present), these two factors are lacking.

(中略)

Hence the first two steps in the path of yogabhyasa, yama and niyama, must be followed by everybody.

人間が満足して生活するには、「平和」と「社会的堅忍性」の2つが必要であるとし、これらが現代人(当時)には欠けているために、様々な不和や生活水準の低下が起こっていると説明されています。

だからこそ、8支則のうちの最初の2つ、ヤマとニヤマは毎日実践されなくてはならないとまとめられています。

ヨーガスートラにおけるヤマとニヤマは、それぞれ以下の5つの戒律が含まれています。

ヤマ

ahimsa, satya, astheya, aparigraha, and brahmacharya

  • アヒンサー 非暴力
  • サティヤ 誠実
  • アステーヤ 不盗
  • ブラフマチャリヤ 梵行
  • アパリグラハ 不貪

ヤマをひとつひとつ実践していくと、他者だけでなく、すべての生き物に対しても愛情と慈悲の心を持つ関係を築くことができるといいます。

ニヤマ

sauca, santosha, tapas, svadhyaya, and isvara pranidhana

  • シャウチャ 清浄
  • サントーシャ 知足
  • タパス 熱意・精錬
  • スヴァディヤーヤ(スヴァディアーヤ) 読誦・自己研鑽
  • イーシュヴァラ・プラニダーナ 祈念・献身

ニヤマをひとつひとつ実践していくと、暴動・怒り・憎しみ・嫌悪は幻想となり、社会から徐々に消え去っていき、平和と静けさという最高の永続的な状態の成長につながるといいます。

アーサナの効果

Asana practice renders correct blood circulation. The snayus (ligaments) and various parts of the body will function at the perfect, ultimate level. It also causes all types of internal circulation to function properly. We all know the connection between good blood circulation, good nadi granthi, healthy body and good health.

アーサナの実践によって、まず血流が正しくなり、そして身体の様々な部分が完璧に機能するようになるといいます。またそれは、内部の循環も正しく整えます。

良い血流と、良いナディ・グランティは、健康な身体をつくるうえで大きく関係していると説明されています。ナディグランティといったものは、ハタヨーガの生理学では重要なもので、ナディはプラーナ(気)が流れ、グランティはそこにある関所のようなものです。物質的な肉体上のものではなく微細なものですが、これらは身体の健康を大きく左右しているといいます。

用語:ナディ(ナーディー) nāḍī

用語:グランティ granthi

用語:プラーナ(プラナ) prāṇa

これらはチャクラを扱う際に合わせて出てくる概念であり、この後の1.2節でチャクラの説明が始まります。

プラーナーヤーマの効果

Because of the power of pranayama practice, one develops strength in the bones, the bone marrow and the heart; one develops the brain, the head, the anna kosam, the fat layer, the mana kosam, the strength of breath and prana, and longevity; it sharpens the senses, strengthens the intellect and the voice and purifies the blood.

プラーナーヤーマは、呼吸法や気の制御と言った意味で用いられる言葉です。実践することで、以下のような効果があると語られています。

  • 骨・骨髄・心臓が強くなる
  • 脳・手・アンナコーシャ・脂肪層・マナコーシャが開発される
  • 呼吸とプラーナ(気)の強さ・長寿が得られる
  • 感覚が研ぎ澄まされる
  • 知性と発声が強化される
  • 血液が浄化される

参考:呼吸法入門

コーシャ(鞘)とは、体を構成するいくつかの層を表していて、アンナコーシャ(食物鞘)はいわゆる物質的な肉体、マナコーシャ(意思鞘)は下位精神と欲望と司る体であるなどと定義されます。

用語:コーシャ koṣa

血液の浄化とナディ・チャクラ

Hence all Ayurveda texts speak specifically on the importance of good blood circulation and bone strength for good health. If the blood is not clean, then the nadi cakras will not function (rotate) properly.

プラーナーヤーマの効果に含まれていた、血液の浄化と正しい循環、骨の強さといったことは健康を得る上でとても重要であり、血液が浄化されていなければナディ・チャクラは正しく機能(回転)しないと説明されています。

チャクラは「車輪」といった意味の言葉で、それらが機能していることは健康な体をつくる上で重要であるとハタヨーガでは考えられています。現代ではチャクラを「開く」とか「活性化する」といった表現が使われることもありますが、本来の意味が「車輪」であることから、チャクラが正しく機能している状態は「回転している」という表現が近いのかと思われます。

用語:チャクラ cakra/chakra

ナディは気の通り道であり、チャクラ間を結ぶようにして通っています。東洋医学で用いられる経絡・経穴と近いものであるとも考えられますが、それぞれ主要な通り道を比べてみると、異なるものもあり、共通するものもあるようです。

参考:経絡・経穴・ナディ・マルマ・チャクラ研究

ではチャクラというのはどんな種類があり、体の中のどこに存在し、それぞれどんな機能を持っているのかといったことが、このあとの節で説明されていきます。

次記事:(執筆中)

前記事:ヨーガマカランダ概説【1】前書き・参考文献リスト

関連書籍

Yoga Makaranda(無料PDF 3.9MB)

アイアンガー氏の著作「ハタヨガの真髄」(Amazon)

パタビジョイス氏の著作「ヨガ・マーラ」(Amazon)

男性ヨガインストラクター 高橋陽介の写真

by 高橋陽介

お読みいただきありがとうございます。他にもコラムを多数公開しています。
より知識を深めたい方には、個別にオンラインレッスンを行っておりますので、初心者の方もお気軽にご利用ください。

コラムを探す オンライン個人レッスン

公式LINE レッスン料金 スケジュール

※記事内容は執筆当時の情報・見解によるもので、現時点では有効でない場合がございます。

※記事内容を参考にされて生じたトラブルなどについては、自己責任にてお願いいたします。

サイト内検索

コラムを探すページへ